独立少年合唱団 四季の移ろいと少年たちと、その歌声が美しい。監督の緒方明は風景を人物描写に投影して、作品の美しさにかけては際立っていると感じる。

母親を早くに亡くし、父親も病死した道夫は山中にある全寮制の独立学院に転入するが、どもりが原因でいじめに遭う。孤独な道夫に、グリークラブに所属する康夫が手を差し伸べる。康夫もまた学校で浮いていた。二人は友情を育んだ。国語の授業で朗読をさせられそうになる道夫に変わり、康夫が読まんと席を立つ。声変わりを迎えた時、発声を拒む康夫に朗読の機会が訪れ、今度はどもりを克服した道夫が「走れメロス」を読む。二人の距離が近く、どこかエロティックだ。

70年代初頭の全共闘運動真っ只中、寂れた田舎町にも余波が訪れた。グリークラブの顧問・清野は学生運動あがりで、昔の仲間である里美が頼って来る。道夫は彼女に感化された。青く、もろい。喉を守るため、一致団結するため、クラブの面々は揃いの赤い包帯を首に巻いた。授業ではロシア史を学び、コンクールではポーリシュカ・ポーレを歌う。

「僕の名前は伊藤康夫です。忘れないでね」という康夫のセリフが印象に残った。「忘れていることと覚えていること、どっちが大切かな」という道夫のセリフが印象に残った。記憶がテーマの一つとなっている。コンクール本番の模様は映さなかった。それがラストに反映される。妄想が記憶にとって変わる。あるいはそれが走馬灯だったのか。2時間強の長尺に散りばめられたもの。時間を越えてシーンは幾重にもつながる。