母は一粒種の僕に心血を注いだ。母はまず女児を身ごもったが、僕の姉になるはずだったその子供が陽の光を浴びることはなかった。母は親の愛を知らない。母はそのせいか、僕のための犠牲や苦労を全くいとわなかった。母は僕にとって唯一、全幅の信頼を寄せている人間だ。

母は元来体力がすこぶるない。母は病弱でいろいろ患っている。母は15年前に乳がんになりかけた。母は10年前に脊椎を痛めた。母は5年前からげっぷが絶え間なく出るようになった。母は最近リウマチになった。母は脳の血管が切れるという遺伝を恐れている。母はそれでも、バイタリティがある。母は僕にとって絶対的存在だ。

母に腸がんの疑いがかけられた。母は、以前に乳がんのことがあったからショックはさほどなかったと言っている。良性の可能性は低いらしい。