適材適所に充てるキャスティング。日本で公開されたダルデンヌ兄弟の4作品全てに、オリヴィエ・グルメは出演している。分厚い眼鏡と屈強な体つき、それは紛うことなく彼だとすぐに分かるのだが、主人公ブリュノを演じたジェレミー・レニエが「イゴールの約束」のイゴールだったと気づかなかった。人生や生活を易しくしか考えることができないが、ブリュノは優しい。前半は執拗なまでに彼の幼児性を描く。
ブリュノとソニアの若いカップルに子供が生まれた。良くも悪くも無邪気という点で二人は共通していたが、ブリュノはさらに責任感がなかった。その場しのぎで生きてきたブリュノにとって、息子の誕生は抱えきれないほど大きすぎるものだった。
乳母車を押しながら、車の往来が激しい道を渡る場面が多い。無機質で暴力的なパワーとスピードの合間を縫う、弱き人間の姿が印象的だった。武骨で媚びることは一切ないが、演出は綿密に計算されている。極限までそぎ落として必要最低限、しかし必要な情報は全て揃えている。
ラストでブリュノは変化を見せる。受け入れた現実と決めた覚悟。懺悔は辛く、そして慟哭から一転、暗幕と無音とエンドロールで、僕はしたり顔で頷く。通ぶって、やはりなと。