コンビニで用事を済ませる時は、自転車に鍵をかけない。店内から外がうかがえるので問題ないと踏んでいる。スーパーで買い物をする場合も、目には届かないがせいぜい15分程度、同様に鍵はしない。牛乳と卵を買って出ようとすると、学生服の男がびあんち号
を触っているのが見えた。血が上り、ドアを開けるや否や「おい」と叫んだ。その声に振り返り、僕が見ていると知った彼は自転車から手を離した。大股で近づき、襟首をつかんで「俺のチャリがどうかしたか」と顔を近づけてすごむ。
「奥にある自分の自転車を取ろうとしただけです。すみません」彼は僕をちらちらと見て肩をすくませている。隣に目をやると、同じ学生服を着た彼の連れらしき男が自転車を手に直立不動で見ていた。単に邪魔なだけだったようだ。ばつが悪くなってそそくさとびあんち号にまたがり、そこを動かない彼らより先に去る。