ブンレツグランマのいるホームへ行くと、他の入居者にも客が来ていた。老紳士が同年代の女性を見舞っている。僕は肩越しに会話だけを聞いていた。「明日も来るから」そう言われて彼女は笑い声をあげた。「明日も来てほしいでしょ?」と問われると「どっちでもいいよ」と答える。彼にしてみれば来てほしいと言わせたかったのだろう。彼女は気を使って曖昧な返事をしたのだろう。再度尋ねて再度同じ答えが返ってくる。「また明日来るからね」と彼は去った。

程なくして「誰だか分かる?」という声を聞いて僕は振り返った。中年女性が彼女を見舞う。その問いかけに返事はない。分からないようだった。「やだ、自分の娘を忘れないでよ」。彼女は本当に分からない。「お父さんはもう来たの?」「うん」「あら、お父さんのことは覚えてるのね」。二人は笑った。