結核を患う剣客・平手造酒、彼を剣客として雇った笹川繁蔵、その宿敵である飯岡助五郎が登場する浪曲「天保水滸伝」に、盲目の按摩で居合いの達人・市を着色した時代劇シリーズの第1作。

座頭の市が飯岡の門をくぐり下駄を脱いだ。その地で幅を利かせている飯岡は、新興勢力である笹川を討つ機会を伺っており、その助っ人として市を囲う。笹川もまた江戸の浪人である平手の造酒を招いて飯岡を潰そうとしている。そうとは知らずに市と平手はため池で釣りを興じている時に出会い、互いに引かれて親交を深めていった。そんな中、飯岡からの果たし状が笹川の元へ届いた。

飯岡と笹川の出入りは喧騒の殺陣を見せる。カメラは屋内外を行き来して臨場感があった。平手と市が面をつき合わすと一転して静寂、画面に緊張が走る。

彼らが発する、流れるようなべらんめえ口調が爽快だった。その口跡はスペイン語やイタリア語に負けないリズムがある。一宿一飯、渡世の仁義。任侠に生きる男の美学を堪能し、日本人は浪花節を脈々と受け継いでいるのだと実感した。