キアロスタミ十八番のジグザグ道はいきなり登場し、車が土煙を立てて走る。イランの原風景として僕は既に刷り込まれている。本作では自然美にこだわっているようで、死と対を成すものとして「この美しい世界」というセリフがあり、黄金色の大地を多く映した。

TVクルーが山間の小さな村シアダレにやって来た。ディレクターのベーザードの友人がその村の出で、友人の親戚にもてなしてもらう。山を削って構えたこの集落は立体的な造りで、それを様々な角度で撮る。家の2階を真正面から捉える手法もキアロスタミ作品でよく見る。彼らの目的は中盤まで明かさない。

毎日が淡々と過ぎていく。案内役である友人の甥っ子ファザードには具合の悪い彼の祖母の様態を伺う。日々その様態は変わった。部屋を借りているファザードの叔母には村の生業を聞き、夏は収穫で忙しいが冬は暇を持て余すと言う腹が膨らんだ彼女に、冬には冬の営みがあるのではないかと問う。その翌日には子供が生まれた。村には電話線がなく、ベーザードはボスから電話がある度に電波が届く丘まで車を飛ばす。そこで井戸を掘る男、カメラには姿を見せない彼とは他愛もないことを話す。しかし会話から素朴で優しい人柄が伝わった。親しくなるにつれてベーザードは愚痴をこぼすようになった。

ベーザードたちの目的は葬式の取材だった。学校に向かう教師を拾い、車で送る時にそれが明らかになる。一風変わった村の葬式を「辛く痛ましい因習」だと教師は言った。それは貧しさからくるものだと加える。学校に着き車を降りて、教師が松葉杖をついていることが分かった。ああそうだったのかと、途中で気づかせる手腕はさすがである。他には言語。ベーザードは時折彼らの話す言葉が理解できない。「クルド語は分からない」の発言で繋がった。虐げられてきた民族の貧しさ、それが起因となる風習があった。

葬式を撮影しようと、人の死を待つ。わだかまりを感じている時、「ごきげんよう、神のご加護を、誇りを持つよう、長生きするよう、健康でありますように」と、通りすがりの老人に声をかけられる。「この美しい世界」を去り、その先にあるのは天国か地獄か。この世で最も残酷なものは死だと説く。