警察とマフィア、それぞれに送り込まれたスパイが互いを窺いながら葛藤するこれは、サスペンスというべきかヒューマンドラマというべきか。フィルム・ノワールを感じさせ、ハードボイルドに仕上がっている。質実剛健なプロットで密度が濃い。

マフィアの構成員ラウは、ボスのサムから警察官になることを命じられ、警察内部から情報を漏らしていた。ラウと時を同じくして警察学校に入ったヤンは、その能力を見出されて学校を除籍し、ウォン警視の指示の元で潜入捜査官としてマフィア一味に身を置いた。サムの麻薬取引現場を押さえ、彼の手下となったヤンの内通によってウォンが率いる捜査チームは逮捕を目論む。しかしチームの中核であるラウが状況を逐一サムに報告し、寸でのところで証拠を逃した。取調室でウォンやラウを始めとする刑事、サムとヤンたち子分のマフィアが顔を付き合わせる。刑事側にもマフィア側にもスパイがいることを、ウォンとサムは確信した。ウォンはラウに、サムはヤンに内通者を調べさせる。

アンドリュー・ラウと共同監督も務めたアラン・マックの脚本は、心理描写に長けている。常に緊迫感を維持し、幾つもの伏線を張り、それでいてスパイの苦悶や焦燥を細かく演出する。素性を明かせず敵地に単身乗り込み自分の恋人をも欺くヤンとラウのジレンマ、警察とマフィアとの虚々実々の駆け引きが鮮やかにシンクロした。監督二人は続編「インファナル・アフェア2」「インファナル・アフェア3」の他にも「頭文字D THE MOVIE」でもコンビを組んで、どれだけ仲が良いのだろう。