ユニットバスシンドローム 別れた恋人を忘れられないフジモトは、ユニットバスの天井裏に彼女との写真を置いていた。友人たちはそんなフジモトのことを心配している。友人の一人ダイスケが誕生日を迎え、彼の家でサプライズパーティーを開いた。フジモトはダイスケを驚かすためにユニットバスへ隠れる。そこの天井裏にはなぜか女性がいて、彼女シノハラは幽霊だという。

フジモトとケンタら友人がダイスケのためのパーティーを企画しながら、フジモトには内緒でそれは失恋パーティーも兼ねていた二重構造のサプライズ。複数の場面をカットを細かく刻んで同時進行するシーンは幾つもあった。セリフと映像を分断し、時間軸を交錯させる編集が巧妙である。

自殺したシノハラだが、この世に未練を残して留まっている。「全部忘れたくて死んだのに、今度は忘れられたくなくてここにいる」とフジモトに話す。ケンタを言いくるめ、3人で彼女の実家に向かった。忘れる踏ん切りがつかないフジモトにはシノハラがどう写る。その日は彼女の命日で、家族と親友の姿を見つめるシノハラを、フジモトが見つめる。

幽霊は生前に関わりがなかった人にだけ見える設定で、家族や友人はシノハラの姿が見えない。飲食はしないが人間と接触できる。定義がはっきりとしないものである幽霊に約束を決めることは、ややもすると説明的になりやすいが、流れが滑らかな会話で消化した。

プロデューサーとして友人が携わり、その縁で鑑賞に至ったわけだが、劇場のシネマアートンはこじんまりとしていて居心地が良かった。アンティーク調で狭い階段を上るとオープンテラスもある。晴れた午後にそこで100円で売られているおにぎりでも食べながら一人佇むのも乙かも知らん。上映後のイベントで本作の監督・山口智と「月とキャベツ」の篠原哲雄のトークショーがあった。インディペンデントの厳しさを知る。しかしスタッフが家族的で充実してそうだった。