リチャード・ニクソン暗殺を企てた男 先だってウォーターゲート事件の「ディープスロート」が明るみに出たことで、ニクソン元アメリカ大統領の周辺がにわかに騒がしく、計らずもタイムリーだった。思わぬ副産物はどうでもいいのだが。どうでもいいといえばタイトルでもあるリチャード・ニクソン暗殺計画も単に最後の結果にしか過ぎず、本質はそこにはなかった。

妻マリーに別居を強いられたサム・ビックは不器用な人間だった。兄が経営する会社で働くも方針と折り合わず、職を転々とする。ここまでの説明は映像にはなく、サムの言動でそれに至る経緯で読ませた。彼の希望は家族との復縁と、ただ一人の友で黒人のボニーとの起業。しかし全てがうまくいかない。自尊心が過度に強く、責任転嫁の繰り返しで社会に憎悪を抱き始める。多くを望まず博愛的なだけに余計痛ましい。純粋さと身勝手さは子供と変わらない。

監督のニルス・ミュラーはこれがデビュー作とのことだったが、一貫して主人公を追い続ける姿勢に気概を感じる。サムへの視線は微動だにせず、そのサムが追い詰められて精神が破壊されていく様子を映す。

友人に強く推されて本作を見た。ショーン・ペンが好きな僕は、彼の演技ばかり前面に押し出されるこれに引き気味だったが、そう構えることもなかったわけで。ほとんどのシーンで彼は出ずっぱり、技量を見せつけられる。自分と近親者を足したような、そんなサム・ビックの人格が移入を促進する。