ピンク四天王の一角を担った瀬々敬久が18禁映画を撮った。戻ってきたというのが適切だろうか。「MOONCHILD」は善し悪しは別にして少なからず思い入れがある作品だったので、これは見逃せない。
母親を殺した引きこもりの少年・秀則と、自閉症のその叔母・妙子が歩む当てのない旅を追う。二人で外国へ行こうとするが、外界に疎い彼らはその術を知らない。
道中で出会う妙子の母親、二人を拾うアイスクリーム屋、負傷した秀則を治療するホームレスが人間の欲望として描かれた。アイスクリーム屋とホームレスは性的欲求を満たすために二人を助ける。妙子の母は、妙子がゆきこを殺したと思い「おまえが死ねば良かったのに」と恨み節をぶつける。同じ娘でも健常な姉を愛し、精神を病む妹を嫌った母。さらに「おまえを生んだ私への仕返しか。子宮に帰ってよ」と掴み掛られた妙子は、涙を流しながらうなり声を上げるだけだった。
何もかもが剥きだしだった。トマトを食べるシーンが重なる。食しながら果汁が飛び散る模様と、その湿らす唇の動きがエロティックである。喰らいつつセックスをする、食欲と性欲を同時に満たすダイレクトな行為もした。セックスに関すると、秀則は妙子を拒む。妙子も挿入を試みると痛みで断念する。それが徐々にお互いをむさぼるようになった。生と死を捉え、それに直結するセックスと食が生々しい。
秀則が捕まえた川魚を石で叩き殺す。血で赤く染まる目や内臓が飛び散る。そのグロテスクでいたたまれない暴力が生の実感であり渇望だった。生き方や愛し方が不器用で好転しない。