オペレッタ狸御殿 1939年から続いた「狸御殿」シリーズの新作を御大・鈴木清順が撮りあげた。「時代劇は制約が多いが、それをどう利用するかが面白い」と言っていた清順独自のワールドと、歌と踊りを絡めたラブストーリーとのクロスオーヴァーは楽しみだ。

がさら城の城主である安土桃山は「生きとして生けるもので一番美しいもの」の座を、息子の雨千代に奪われることを恐れ、彼を快羅須山へ捨てようとした。その途中で雨千代は運良く難を逃れ、狸姫と出会う。二人は互いに惹かれ合うが、その恋の行く末には弊害があった。狸姫が住む狸ヶ森には「狸と人が恋に落ちてはいけない」という掟があった。乳母のお萩は「人は病」と言う。人と関わると災いが生じるとのことだが、この言葉は痛烈だ。人間以外にとって、人間は存在自体が悪だととれる。

セット、ロケ、CGがめまぐるしく入り混じる。文化が雑多に取り込まれたセット、平坦な2次元のCGが奇想天外な玉手箱のようだった。ミュージカルは娯楽満載。中でもびるぜん婆々を演じた由紀さおりの歌がとりわけ見事だった。ラップもこなす。お萩との対決にジャンケンで敗れて婆々は命を落とす。そのやり取りもまたコメディとして質が高いが、最期として披露する歌詞がまた笑う。「生まれ変わってもまたびるぜん婆々として100歳まで生きたい」。

エンドロールで狸楽団の永瀬正敏と田中要次の名前が目についた。東京スカパラダイスオーケストラの長身は気づいたのだが、その2人は全く分からなかった。木村恵吾、美空ひばりと偉大な故人も名を連ねる。