
見事な構えで、脱衣所には昔の写真が貼られてある。大正13年から創業しているらしい。トイレは脱衣所から外に出るのだが、狭いながら庭を臨め、まるで小さな旅館である。
浴室は概観を思うとさして広くない。しかし天井が異様に高く、α波を出させる。タイルの絵が3方向に渡っている。隣に座った老人は横顔が小泉純一郎の20年後のようでなかなか男前。同年代の常連客と世間話をしている。湯船に浸かりながら遠い天井を見上げた。彼らの話し声だけが響く。見ると小泉氏の連れは体を洗うでもなく手持ち無沙汰だ。小泉氏が洗い終わると、一緒に立ち上がって湯船があるこちらに向かう。睦まじさが微笑ましい。
電気風呂がある。腰に良いかどうか不安ではあるものの、恐る恐る電気孔に体を近づける。まずは腕を差し出し、ピリピリの度合いを確かめた。この程度なら、と腰を孔にあてると、筋肉が一気に緊張し、袋は一瞬で収縮する。これはいけない。逃げるようにジェット風呂へ移る。
多分に漏れず今日ものぼせる。Tシャツとパンツだけ着てコーヒー牛乳を買ったところで、猛烈に頭がグラグラした。倒れそうになりながら長いすに寝転ぶ。手にコーヒー牛乳を持ったまま10分ほど動けない。大量の汗が体外に出ていることが認識できる。これはこれで貴重な体験。もう金を惜しんで長湯はしない。そう決めた。