何よりもグロリア・スワンソンの匂い立つような怪演が光った。二流脚本家のギリスが迷い込んだ古屋敷には元大物女優ノーマと執事のマックスが住んでいた。ノーマに雇われる形でギリスはそこに住み込み安定を得るのだが、世俗から離れた彼女たちの生活に侵され徐々に暗転する。過去の栄光にしがみつくノーマをスワンソンが演じたのだが、どうやら彼女の半自伝のようである。サイレント時代にならし、途中燻っていたところで、監督のビリー・ワイルダーが抜擢した。彼女を若い頃に見出したセシル・B・デミル監督が本人役で出演している。マックスの異様な愛に守られながら、銀幕スターに固執するノーマ。ギリスを愛するようになり、彼の囲いに執着する。モノクロならではの陰陽で、暗闇に浮かぶ彼女の目と口が見事なまでに不気味だ。

この時代のハリウッド映画は共同脚本が主流だったのだろうか。ビリー・ワイルダーの作品はほとんどそうで、劇中にもギリスと彼の友人のフィアンセが二人で執筆する場面がある。互いにアイデアを出し、掛け合いをしながら作業を進める。件のスワンソンも然り、虚実が入り乱れる。オープニングとラストがリンクして、実は殺された男が語り部となっているのがハードボイルド。