レンタルは見る行為に義務感が生じて敬遠気味だった。肌に会うと感じているキアロスタミ以外のイラン産を借りる。これ以外でも「太陽は僕の瞳」などヒット作を飛ばすマジッド・マジディ監督。最近動きがないが、隠遁生活を送っているのだろうか。

妹のザーラの靴をなくしたアリは、それが親にばれるのを恐れている。何とかザーラを説得して、二人でアリの一足の靴を交互に使うことにした。ザーラは渋々了解するも、ぶかぶかの兄の靴は気に入らない。アリが学校に間に合うよう、毎日走って靴を届ける。ある日、その途中で靴が脱げてしまい、狭い溝を流れる水に靴がさらわれてしまう。流れる靴とそれを追いかける少女。ただそれだけのことを、実にスリルある疾走感で映し出す。貧しさや、持てる者と持たざる者。邦画が背景を理解できることが前提になっているのに対し、洋画はそこから知ることができる一つの術になる。先天と後天が最たる違いだ。

アリは3等賞品の運動靴を狙いマラソン大会に出場する。そこで1位をとってしまい、靴を手に入れることができず肩を落とす。その頃、父は子供達のために靴を買っていた。ザーラは家で洗濯をしていた。誰かが帰ってきて、そちらを見るザーラ。目を向けた方向に父がいれば靴を手に入れ、アリがいればその時点では靴がないことを想像させる。帰ってきたのはアリだった。アリの表情で靴がないことを理解し、ザーラはその場を離れる。落胆したアリは庭の池に足を入れ、マラソンで疲弊した足を池の中の赤い金魚がねぎらう。そこで暗幕。その後に父がザーラに靴を与えるところは余韻として残す。