冴えない男クオイルは若く美しいペタルと恋に落ち娘が生まれた。奔放に遊びまわるペタルは若い男と家を出るが、事故で死んでしまう。失意のクオイルは叔母のアグニスに導かれ、娘と3人で祖先の地ニューファンドランド島で暮らすことにする。港町であるその地は極寒の厳しさがあるものの、原風景が美しい。時に暴力的な海や、波により削られたそびえ立つ崖が映し出される。そこで新聞社に勤めることになり様々な人間と出会うことで生を取り戻していく。狭い町であるがゆえに過去が蒸し返される。人づてに形成されるアイデンティティー。

ラッセ・ハルストレムの監督作品は、寓話の多い北欧出身が関係しているのかファンタジーが盛り込まれることが多い。後味のよさが特徴で安心して見られる。「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」や「やかまし村」シリーズは視点が幼く、純粋にすがすがしい。結びの部分が一貫してハッピーなのはハルストレムの人柄がにじみ出ているからなのだろうか。ジュディ・デンチ、ピート・ポルスウェイト、リス・エヴァンスなどイギリス系の俳優が目立つ。舞台出身者の演技が安定感抜群だった。