ジムで寡黙に鍛える人たちがいる。頭を丸め無精ひげを蓄えたそれは、腹筋台を根城とする。他のマシーンを使用しても、すぐそこへ戻りそこで落ち着く。目を閉じて瞑想し、時折ぶつぶつと呟くこともある。見開いた眼には迷いが見えない。

青い目をした異国のそれは、まだ若年で年長者への敬意を忘れない。常連客に声をかけられれば頭を何度も垂れて「~っす」と答える。ひとたびその輩が去ると、恵まれた資質をより高みへ進めるために黙々とエクササイズをこなす。

文学を愛するそれは、文庫本を常に持ち歩く。限界を超えた負荷をかけ、苦渋で顔を歪ませる。インターバル時はベンチに腰掛けて熱心に読みふける。おもむろに本を閉じて、また己の限界に挑む。