ビクトル・エリセも絶賛の小津安二郎の無声映画。音が全くなく、台詞は映像を中断して暗転の中で字幕が入る。色もなく、必要最低限にそぎ落とされた情報だけを提供する。無声映画は最も良心的なそれという捉え方もできる。

郊外へ越してきた兄弟は近所の子どもたちからいじめられ、学校を休みがちになる。彼らはガキ大将に勝つために策を練った。子どもたちのコスモス。やがてそこに政治や力が反映されてくる。酒屋の青年をとりこんで覇権を奪うも、子分の中に父親の上司の息子がいた。兄弟の父親は偉くなるために勉強をしろと諭すが、その父が重役におべっかを使っているところを見てしまう。暮らしを良くするために会社の重役の近所に引越し、滑稽な顔をつくって機嫌をとる。そんな父を見て兄弟は反抗した。ご飯を食べないという彼らの決意表明に対して「この問題はこれからの子どもには一生ついてまわるんだよ」と父親は母親に言う。おそらく、この台詞がハイライトではないだろうか。大人だけでなく、子どもにもある様々な軋轢が苦い。和解して縁側に父親と兄弟が並び、断食後のおにぎりを3人で食べる。3人の横顔が段々に揃う構図がまさに小津で微笑ましい。