一度見た映画を回顧で2本。内乱期に生きた姉妹イザベル(イザベル・テシャリア)とアナ(アナ・トレント)の感受性を描いた寡作の天才ビクトル・エリセ監督作。

年に一度“映画の缶詰”フィルムが町にやってくる。町の公民館で映画「フランケンシュタイン」を観賞した二人は、純粋な心を持つ怪物に精霊をみる。時間軸の描写が驚異だ。扉と思われる口が二つある廃屋に出入りする姉妹。出たときのリアクションで中に何があって何がなかったのか。アナとイザベルは廃屋から逃げるように走ってフレームアウトする。次にアナだけがそこに立っていることで、時間が一日以上開いていることを表現している。廃屋には脱走兵が一人潜んでいた。アナは彼を精霊と信じ、リンゴや服を施す。感じすぎる少女は経験が少ない。それゆえに多くを感じ取ってしまう。漏れる光がはかない夜中の銃撃戦で脱走兵は命を落とした。家の食卓、彼にあげたはずの父の懐中時計が、父の手元に戻っている。その懐中時計を手にしている父から視線を離せないアナ。彼女の視線で、なぜ懐中時計を脱走兵が持っていたかを悟る父。彼女もまた兵士の死を理解する。それはすなわち精霊の死であり、アナに影を落とすことになる。

アナ役のアナ・トレントは顔の1/3が瞳である。その大きな両の眼で何事も真摯に見つめる。彼女が興味を示したものはなぜか全て魅力的に見える。無邪気に幻想を交錯させるアナ。アナのかわいさあまりに神格化する僕の幻想。