ドラフト会議終了。僕にとっては毎年の一大行事になる。そのドラマ性に魅せられて10年以上が経つ。中日のドラフトは早くから指名を発表して他球団を牽制する、ここ最近に見られる堅実さが出た。変化といえば高校生主体から連覇のための即戦力固めに移行した点。僕は高校生主体論だったが、自分が年をとるに連れて紆余曲折がある選手が好きになってきた。中日では渡辺、大西、仲沢など。

 自由枠:樋口龍美・投手・左投げ・JR九州・28歳
中日が初めて自由枠を行使した即戦力左腕。妻子持ちの28歳ということで1年目からの活躍が使命課題。野口のトレードが噂されているので、山本昌に次ぐ左のローテーションとして新人王争いに絡めるか。

 2巡目:中田賢一・投手・右投げ・北九州市大
学生時代は怪我に泣いたが150キロのストレートを投げる素材抜群の速球派。高校時は全くの無名ながら急成長を遂げた。まだ使い減りしていない強みがある。数年後の先発の柱に。

 4巡目:川井進・投手・左投げ・日本通運・24歳
先発、中継ぎをこなせるサウスポー。柔らかい肩と長いリーチからキレのある速球とスライダー、カーブを放る。ローテの谷間やセットアッパーとして重宝する存在になり得る。

 5巡目:鈴木義広・投手・右投げ・中部大
地元から指名を受ける。恵まれた体躯から威力抜群の球を投げる大型サイドハンド。同じ横手投げの正津・川岸としのぎを削る。リリーフよりスターター向きの声も。

 6巡目:石井裕也・投手・左投げ・三菱重工横浜クラブ・23歳
難聴で左耳が聞こえない「サイレントK」の異名を持つ社会人屈指の左腕。横浜の指名が濃厚だっただけに意外だった。中継ぎで30試合以上を期待。入団拒否が懸念材料。

 7巡目:中村一生:外野手・右打ち・国際武道大
ノーマークだったパワーヒッター。今年代打の切り札として活躍した高橋光信の大学の後輩にあたる。ライバルになれるか。

 8巡目:小山良男:捕手・右打ち・JR西日本
中学、高校、大学で全国制覇の経験を持つアマチュアのサラブレッド。松坂・木佐貫らとバッテリーを組み、経験豊富でリードに定評がある。引退後は指導者としても一花咲かせそう。

 9巡目:金剛弘樹:投手・右投げ・日本通運・25歳
毎年ドラフト候補に挙がっていた右腕がついに指名。強い精神力を持ち、樋口に次ぐ即戦力か。右のセットアッパーが高齢化している現状を打破してほしい。

 10巡目:鎌田圭司・内野手・左打ち・トヨタ自動車・25歳
160cmの小兵内野手。おそらく現在の日本プロ野球界で最小の選手になる。俊足、好守で鉄壁の二遊間・井端、荒木のスーパーサブに。

 11巡目:沢井道久・内野手・両打ち・東海理化・25歳
中村一生と同様に詳細が分からず。スイッチヒッターは貴重な存在。手薄な内野陣だけに守備要員として開幕一軍も。

 12巡目:普久原淳一・外野手・左打ち・法大
六大学屈指の守備力を誇る俊足外野手。早くから指名を予想されていた一人。左の英智になれるか。

ほぼ受け売り。それなりに楽しめたドラフトだった。日ハムが獲得した上武大投手の菊池をスルーしたことが意外だ。あとは中村、沢井の隠し玉。セ・リーグは実力が拮抗して連覇が非常に難しくなっている。そんな中で即戦力候補のみを指名したのは意思が明確で好感が持てる。

現段階で勝ち組とされるのは横浜だろう。那須野や染田、藤田などネームバリューの高い選手を多く獲得している。涌井・星指名の西武と江川・高橋徹指名のダイエーも相変わらずうまかった。巨人とロッテもまあまあか。日ハムは来年よりも3年後が非常に楽しみだ。楽天の即戦力偏重はチームの余裕のなさがうかがえる。全体的に高校生の指名が少ないのは、日本プロ野球界の現状に対する危惧のあらわれかもしれない。

今年のペナントレースは一軍二軍の入れ替えが激しかった中日。新人の中で少なくとも半数以上が一軍の試合を経験することを願う。入団間もない選手が早く引退するケースも目立つので、早めに結果を出さないと厳しいだろう。レギュラー、主戦級の活躍を見込むよりも、戦力の厚みを増す王者のドラフトといえるかもしれない。ただ、このようなドラフトが毎年のようだと危うくなる。チームの顔となるべくスター選手は最短距離の高卒が多い。底上げがある程度になれば、以前のドラフト姿勢に戻してほしい。