大谷翔平が本塁打と盗塁数を凄いペースで伸ばしている。LOS時間9月4日終了時点で、44本塁打、46盗塁。高い身体能力と技術に裏打ちされた唯一無二の記録である。

 

この大谷翔平の活躍において、2つのネット発の指標?ミーム?が注目を集め始めた。

 

片岡式本塁打

これは元西武の片岡易之選手が、「盗塁と本塁打は同価値である、もう少し評価して欲しい。」と契約更改の場で言ったとか言ってないとか、そんな噂から誕生した謎指標である。

 

純粋に本塁打数と盗塁数を足し合わせる。その数が12球団で最も多かった者を片岡式本塁打王に勝手に認定していく。

 

フォローを入れると、スピードスター片岡にとって盗塁は生命線であり、相手へのプレッシャーや得点力を加味したら、彼の盗塁の価値は高かったと言える。実際、2008年は50盗塁して85得点、2009年は51盗塁して92得点、2010年には59盗塁して100得点を挙げている。

 

片岡易之は、ちゃんと2年連続片岡式本塁打王に輝いている点がミソである。

 

2009片岡易之13+51=64(盗塁王)

2010片岡易之13+59=72(盗塁王) 

 

2008年は1桁だった本塁打数が2桁になり、かつ年々盗塁数を異次元の数値に押し上げた事が、片岡式本塁打王を獲得した要因といえよう。

 

 

調べを進めていくと、盗塁王が獲得することの多いタイトルであるという結論に至った。

 

2011本多雄一 0+60=60(盗塁王)

2012聖澤諒 4+54=58(盗塁王)

2013陽岱鋼 18+47=65(盗塁王)

2014梶谷隆幸 16+39=55(盗塁王)

 

片岡からここまで6年連続でその年の盗塁王が、片岡式本塁打王を兼ねている。そして2013陽岱鋼から「2桁本塁打を打てる盗塁王」というアスリート型が台頭してくる。


 

そして2015年、あの男が覚醒した。

山田哲人。史上初トリプルスリーを3度獲得することになる男だ。

 

2015山田哲人 38+34=72(本塁打王+盗塁王)

 

本塁打王かつ盗塁王という離れ業をやってのけ、片岡式本塁打王の極みに到達した。

 

 

2016糸井嘉男 17+53=70(盗塁王)

2017西川遥輝 9+38(盗塁王)

 

この2年はベテランに差し掛かった糸井嘉男が突如盗塁の意欲に燃え始めたり、スピードスター西川遥輝の活躍が目立った。特に糸井は同年に2年連続トリプルスリーの偉業を成し遂げた山田哲人を抑えての栄冠である。片岡からここまで盗塁王が片岡式本塁打王を兼ねる時代が続いている点も見逃せない。

 


そして2018年、あの男が頂に返り咲く。

 

2018山田哲人 34+33=67(盗塁王)

2019山田哲人 35+33=68

 

3度目のトリプルスリーという前人未到の領域に達した山田が片岡式本塁打王の座を奪還した。片岡から山田まで実に11年間、盗塁王が片岡式本塁打王を兼ねた。2019は盗塁王やトリプルスリーこそ逃したが、本塁打と盗塁を高いレベルで両立出来るプレイヤーである事を改めて証明した。


 

2020年は侍ジャパンを快速で支えたあの男が健脚で栄光をもぎとったが、翌年から思わぬ傾向が出現し始める。

 

2020周東佑京 1+50=51(盗塁王)

 

2021村上宗隆 39+12=51(本塁打王)

2022村上宗隆 56+12=68(本塁打王)

2023岡本和真41+0=41(本塁打王)

小深田大翔5+36=41(盗塁王)

 

なんとこれまでの傾向と異なり、3年連続で本塁打王が片岡式本塁打王を兼ねた。2022に三冠王になった村上宗隆は高い走塁意識を持ち合わせていたので納得であるが、2023年に盗塁ゼロの岡本が本塁打だけで片岡式本塁打王に到達したことは衝撃である。

 

盗塁は失敗のリスクに見合った作戦といえないという論調が徐々に球界に広まり始めた説。これまでパリーグは盗塁数が多い傾向にあったが、甲斐拓也、若月健矢、佐藤都志也といった強肩が台頭し、抑止力となっている説。いくつか可能性はあるが、確実に盗塁数が減り、村上や岡本がパワーで魅せるという構図になった。

 

 

シーズン片岡式本塁打数記録は、片岡覚醒以降でカウントすると、


2010片岡易之 72

2015山田哲人 72


片岡はミスター片岡式本塁打王といえるし、山田哲人もその座に相応しい選手だ。

 

 

今年はやけに本塁打の数が伸び悩むシーズンになってしまい、また盗塁主導型の獲得になりそうだが、今後山田哲人のように打てて走れる選手が新たに現れると球界が盛り上がりそうだ。

 

参考:MLB

2024大谷翔平44+46=90(シーズン途中)

デラクルーズ 22+61=81(シーズン途中)

 

 

②赤星式盗塁王

赤星憲弘が提唱した、盗塁失敗の責任の重さを力説し、本当の盗塁の価値は盗塁数ー盗塁死×2によって見出すことができるという理論。その数が12球団で最も多かった者を赤星式盗塁王に認定していく。


あまりにも盗塁死が多いとどうなるか。例えば今年の広島東洋カープを例に出そう。

 

2024広島 50-49*2=-48 (9/4終了現在)

 

盗塁数と同じくらいのマイナスを稼いでしまっていることになる。つまり成功率3分の2でぎりぎりトントンになる作戦が盗塁。むやみやたらにするものではないのだ。


 

赤星式盗塁王も①の片岡易之を起点に認定していこう。

 

(2009福地寿樹 42-6*2=30(盗塁王))

2010片岡易之 59-12*2=35(盗塁王)

2011本多雄一 60-17*2=26(盗塁王)

2012聖澤諒 54-11*2=32(盗塁王)

2013陽岱鋼 47-10*2=27(盗塁王)

2014梶谷隆幸 39-8*2=23(盗塁王)

 

2015山田哲人 34-4*2=26(盗塁王)

2016西川遥輝 41-5*2=31

2017西川遥輝 39-5*2=29(盗塁王)

2018西川遥輝 44-3*2=38(盗塁王)

2019山田哲人 33-3*2=27

 

2020周東佑京 50-6*2=38(盗塁王)

2021中野拓夢 30-2*2-26(盗塁王)

2022高部瑛斗 44-10*2=24(盗塁王)

2023小深田大翔 36-6*2=24(盗塁王)

 

片岡易之は片岡式のみならず赤星式でも王になる盗塁マスターだった。流石は日本シリーズで巨人原監督の脳を破壊し、WBC代表選出、片岡FA補強、代走のスペシャリスト確立など、監督の野球観に大きな影響を与えた男である。


上記から、ある2人の男の偉大さが浮かび上がってくる。2016西川遥輝は盗塁王ではない。だが盗塁失敗を極限まで減らし、40盗塁以上を成し遂げ、盗塁王の金子/糸井を逆転して赤星式盗塁王に輝いた。そこから赤星式盗塁王を三連覇。その前後を山田哲人が挟む。


山田哲人・西川遥輝は無駄に盗塁することなく、極力盗塁死を減らす意識の高さが光るプレイヤーだといえよう。彼らを境に、近年は盗塁失敗を忌避する傾向にあるのか盗塁死1桁の盗塁王が増えつつある。

 

 

それでは赤星本人はどうだったのか。赤星はなんと2001,2003,2004,2005の4回も獲得しており、特に2003年の記録が驚異的で2018西川遥輝、2020周東佑京の結果を越えている。

 

2003赤星憲広 61-10*2=41

 

赤星の理想を継ぎ、盗塁失敗を減らし、盗塁数を重ねる選手が台頭しつつある。野球は27のアウトカウントが減るまでの戦いでもある。アウトカウントを大切にする作戦が今後発展していくことを願ってやまない。

 

参考

2024大谷翔平 46-4*2=38(シーズン途中)

デラクルーズ 61-13*2=35(シーズン途中)