
私はミカン。
小粒で甘くてかわいいタイプよ。
私今、コタツに恋をしているの。
いつかこの箱の中から拾われて、私はあなたの上にそっと乗せられるの。
それから暖かな手で丁寧に皮を剥かれて、私を守っている繊維たちも綺麗に取り除かれて、まだ誰の目にも晒したことのないまっさらな肌をあなたの前に晒すわ。
コタツ、私の姿をよくみていて。
綺麗に皮をむかれた私は小さな悲鳴をあげながらきっといくつかに分けられる。
そうして人間の白くて鋭い歯によってひとつひとつ引き裂かれて食べられるのよ。
噛まれた瞬間、私は歓喜に震えて甘くて少しだけすっぱい汁を漏らしてしまうでしょう。
でもそれはコタツに見られているからなのよ。
まじりあえない私達だけれど、コタツへの慕情に濡れて人間の手を汚しながら私はあなたの為に鳴くのよ。
だからコタツ、わたしがその官能的な時間の中であなたの目の前で果てる様を見ていて。
あなたが私の醜態を見て、少しだけ、ほんの少しでいいから熱をあげてくれたら私は報われるわ。
コタツ、私あなたのこと好きなのよ。
その隠された逞しい足に、そのフカフカの暖かなからだに触りたい。
私のからだをつつんでほしい。
コタツ、私は冷たい廊下に、あなたは暖かな部屋に、離れ離れの私達だけど、いつか生まれ変わったなら同じ温度の生き物になってほしいわ。
私それまでこの暗い段ボール箱の中で、濡れたからだを持て余しながらひっそりと熟して待つわ。
だから待っていてねコタツ。待っていて。
(お母さーん、このミカン腐りそうー)
(えぇー、じゃあ職場持って行って食べちゃいなさい)
(わかったー!ビニール袋ちょうだいっ)

