最強トヨタの赤字転落 | 藤原雄一郎の時事通信

最強トヨタの赤字転落

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最強トヨタの赤字転落


トヨタ式経営の神髄は「不可能を可能にする、永遠のカイゼンを追求する考える人材」にあります。連戦連勝のトヨタが躓くとすれば「事業の拡大に人材供給が追いつかなくなった時」と私は信じてきました。それほどトヨタの事業拡大は急ピッチでした。


内弁慶のトヨタは海外進出を必ずしも真っ先に行ったわけではありません。でも一旦海外進出を決めたならば、一糸乱れずに世界戦略を遂行し、見事に成功を収めてきました。そして国内市場の低迷を尻目に、私たちが気がつけばトヨタの輸出比率は八割にも達し、二兆円を超える利益を叩きだしていました。「さすがトヨタ」「事業拡大に人材が追いついた」と私は心から感動しました。


そこへサブプライム問題の発生です。実体経済に波及するまでには相当時間がかかると私は思っていましたが、「住宅価格上昇での借金の借りまし」で自動車を購入していた層は、自動車購入が出来なくなりました。真っ先に、そして急激に自動車の売れ行きが北米で落ちました。ビッグスリーは破滅に向かっています。日本の自動車各社は北米市場が、文字通り「ドル箱」であったのが暗転です。


そこへリーマンショックで急激な円高の襲来があり、円高がトドメとなって、さしものトヨタも落城してしまいました。この半年、恐らくトヨタのことですから、十分にこのような事態が来ることを予想していたと思います。(急激な円高までは読み切れなかったと思いますが)ですから「派遣切り」の先頭に立ちました。でもトヨタの計算違いは「あのトヨタが派遣切りをするのだから」とまるで免罪符を貰ったように、我も我もと派遣切りが横行し、マスコミが狂ったように企業総攻撃を始めました。これはトヨタにとって全くの誤算だったと思います。


トヨタにとっては「正しい経営をしているのに、どうしてこれほど非難されるのか」と思ったことでしょう。意図してかどうか知りませんが、今回の「赤字転落」の公表は日本国中、いや世界中に大きな衝撃を与えたことだと思います。「派遣切り企業へのマスコミの総攻撃」の矛先がにぶることは間違いありません。


問題はこれからです。私にとっても脱出の方法が全くわからないのです。過去の「日本の金融危機」の場合は脱出への処方箋がきわめて明確でした。高度成長期の大量生産・大量販売の崩壊で「大幅な過剰人員・過剰設備・過剰借金の清算」という明快な処方箋があり、日本経済は10年間かかってこの処方箋を実行しました。


ところが今回は事情が違います。トヨタは今後の事業規模を示すことさえ出来ませんでした。これは「人員削減はこれからも加速するぞ」と言っているにも等しいことです。「派遣切り報道」はもう結構です。現状はよくわかりました。マスコミは今後の処方箋を必死になって追求すべきです。今こそ報道の本質に立ち返る時ではありませんか。