AIG なぜ保険会社が破綻? | 藤原雄一郎の時事通信

AIG なぜ保険会社が破綻?

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AIG なぜ保険会社が破綻?


私は国内にばかり目が向き、今回の一連の破綻騒動に関しては不勉強でした。ですから「保険会社がどうして破綻するの」との素直な疑問がわいたのです。


「保険会社は保険業務をしている」とばかり考えていた私はまさに無知文盲であったのです。AIGは本業の保険業務では利益があがらず、また契約も伸びないために、本業以外で体力を超える事業をしていたことがわかりました。


その一つがサブプライムで有名な「住宅ローン担保証券」でした。自己資本に匹敵する額の証券を保有していたのです。でもこれが破綻の原因ではありません。さらに驚くべきことは事業の柱が「企業向け融資や証券化商品がこげついた時に損失を肩代わりするCDS」という金融保証事業にのめりこんでいたのです。実に自己資本の5倍もの額だというのです。


このCDSという金融商品は金融工学の粋を集めたノーベル賞級学者が練り上げた商品だと言われています。この事業がAIGにとって「絶対に儲かる魔法の杖」であったようです。詳しい内容を説明しても頭がいたくなるだけですから、無理を承知で単純化して説明しましょう。


ノーベル賞級学者が作り上げた金融工学なるものは「理論的には可能だが、常識的にはありえない」との前提に立って「絶対に儲かるしくみ」という魔法の杖を発明したのです。でもその「常識的にはありえない」ことが発生しました。それがサブプライム問題です。


サブプライムの損害は世界中をめぐるマネーの総額に比較すれば実に小さなものです。サブプライムを隔離して独立させておけば、全てが支払い不能になっても、今回のように世界をゆるがすことにはなりません。ところがノーベル賞級学者の発明した「魔法の杖」がサブプライムのような「毒薬の所在」を「テコの原理」で世界中に拡散させて、全てのマネーを毒薬に変えてしまいました。そこで小さな損害が逆に「テコの原理」で世界をゆるがす「ありえない事態」になってしまいました。


前回私が述べたように「人間が英知を結集して完成させたロボットがその優秀な頭脳で、人間に襲いかかった」ようなものです。逆に言えば今まで「マネーゲームで莫大な金額を儲けていた」ことになります。その逆作用が起こったにすぎないのです。


このような大きな倍率で動く「テコの原理」を支えてきたのが「信用」です。その信用がガタガタと崩れた今、さしものバクチマネーも実は「幽霊の正体見たり枯れ尾花」になりました。これでバクチマネーも従来のように自由奔放に暴れ回ることが出来なくなります。


それと同時に大切な「信用」を失った金融の世界は疑心暗鬼で「まともなところへのお金が回らなく」なります。健全な企業がバタバタと倒産することのないように、今回AIGには救済が入りました。


儲ける時は膨大なお金を自分の懐に入れ、損をする時は全世界の善良な市民を人質にとり、税金で尻ぬぐいしてもらう。こんな不公正がまかり通っています。これがアメリカが誇った金融による国家繁栄の実態でした。