第5話 マジック、心の叫び① | 坂道&ジャンルマルチブログ

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現在の主な推しメンは遠藤さくら・賀喜遥香(乃木坂)、藤吉夏鈴・森田ひかる・山下瞳月(櫻坂)、小坂菜緒・正源司陽子(日向坂)です。

「・・・う・・・ん・・・」
とある隠れ家で目を覚ましたマジック。達磨一家に連れて行かれた割には、彼らの領地とは思えない物騒な部屋だった。辺りを見回すと、隣でソルトが眠っていた。
「!ソルトさん・・・!」
「・・・マジック・・・」
ソルトも目を覚ますと、ゆっくり体を起こそうとした。しかし、日向紀久との戦いで殴られた腹の傷が疼いた。
「ぐ、うぅ・・・っ」
「だ、大丈夫ですか!?」
「うっ・・・これくらい、平気だと言っただろ?」
「・・・強がるのも程々にしてください」
マジックに注意されたソルトはふと微笑むと、マジックも苦笑する。すると、何者かがこの部屋に来る気配がした。
「・・・気が付いたか」
ソルトとマジックは声がした方向に振り向くと、そこには傭兵のような戦闘服を着た青年が立っていた。
「誰だ・・・?」
「達磨の日向じゃない・・・アンタは何者だ?」
「お前達をここへ運んだ者だよ」
「なに・・・?」
「俺達は<RUDEBOYS>というチーム。そして、俺がそのチームを束ねるリーダー・・・スモーキーだ」
「RUDEBOYS・・・つまり、関東四獣士の?」
「最後の一人という事か・・・」
「お前ら・・・どうやらマジ女の生徒らしいな。それもラッパッパの部長・ソルトと、四天王のマジックとはな」
「アンタ・・・私達を捕まえてどうするつもりだ?」
マジックが問うと、スモーキーは笑みを浮かべながら二人に近づく。そして腰を下ろすと、思わぬ言葉を口にした。
「・・・お前達は、今日から俺達の<家族>だ」
「なっ・・・!?」
スモーキーの発言に動揺したマジックは、怒りを露にして反論する。
「ふざけるなっ!血が繋がってないどころか、初めて出会った赤の他人と家族?冗談じゃない!私達はマジ女に帰る・・・アンタらの要求は受けない!」
「だったら、今すぐ達磨の所に行って日向に殺されるか?」
「うっ・・・」
「日向の目的は、自分の兄弟を地に落としたマジ女への復讐・・・奴らに目をつけられた以上、お前達が助かる確率は少ない。が・・・この無名街は、ずっと俺達が監視を続けている。だから不法者が現れた時も、この街が危険に晒されることはない」
「そ、それでも・・・私達は・・・」
思う様に結論が出せないマジック。それを横で不安そうに見つめるソルト。するとスモーキーは・・・
「・・・タケシ、ピー。こいつらを無名街に案内してやれ」
「分かった」
スモーキーの後ろから、タケシとピーという二人の少年が姿を見せる。タケシが自分達と同じ服をマジックに投げて渡した。
「ついて来い。この街がどんなところか教えてやる」
「あ・・・」
「・・・私はここで寝ている。マジック、お前だけ行けばいい」
「ソルトさん・・・分かりました」
ソルトの傷の事も考慮したマジックは、ソルトをその場に残し、タケシとピーと共に外へ出る。彼女がその目に映す、無名街の光景とは・・・

































その頃、マジ女のラッパッパ部室では、バカモノやヨガが、ソルトとマジックの事で思い悩んでいた。
「ソルトさん・・・マジック・・・」
「ちくしょう・・・無事なんだろうな?二人共・・・」
「焦る気持ちは分かるが、またいつ達磨や鬼邪高が攻めてきてもおかしくはない。今は耐えるんだ」
ゲキカラに感情を抑えるように言われるも、さくらやおたべ、カミソリ・ゾンビやチーム火鍋も同じ思いだった。すると部室の扉が開き、誰かの声がした。
「・・・落ち込んでる所すみませんが、ソルトとマジックは達磨には捕まってないっすよ」
「・・・!?」
パッと振り向くと、元マジ女の生徒であるネズミとセンターがやってきていた。
「ネズミ、センター!?」
「随分思い悩んだ表情をしてるな、おたべ。まるで昔の私と入れ替わったみたいだ」
「この二人が、前田敦子に下剋上を仕掛けた・・・ネズミとセンター!」
「でも、何故ここに?」
「今言った通りの事を知らせに来たんすよ。ソルトとマジックは達磨の領地に連れて行かれる前に、何者かが達磨を襲撃して二人をさらったんす」
「じゃあ、二人は殺されてないんですね!?良かった~・・・」
「まだ安心はできません・・・達磨の所にいないという事は、明智の人間か中国マフィアに連れ去られた?」
「いや、その可能性はない。明智の背後には、九龍グループの一派・家村会が潜んでいる」
「まだそんな組織が・・・!?」
「ただ、奴らが達磨を利用しているなら、わざわざソルト達の身柄を奪う必要がない・・・つまり二人をさらったのは、日向以外の関東四獣士が束ねるチームだ」
「でも、あの鬼邪高の村山がそんな事するとは思えねえし・・・」
「バカモノ、何故そう言いきれる?」
「あいつと殴り合ってる時に感じたんだ。見かけは悪いけど、決して卑怯な真似はしない奴だって・・・」
「バカモノの言う通り、村山良樹はそんな策を使うような人間じゃありません。となれば、的は二つに絞られます」
「Rascalsと、RUDEやな・・・」
「でも、以前おたべさんとソルトさんがRascalsのROCKYと出くわした時、そこには明智創業の会長も?」
「せやけど、あいつはパパと『娘の事を守ってくれ』という約束を交わしとった。だから、あいつがソルトとマジックを助けたかもしれん・・・うち一人で、Rascalsの店に行く」
「一人で?でも・・・」
「さくら。アンタはバカモノとヨガと一緒に無名街へ行ってくれ。二人が別々の場所に囚われてる可能性もある・・・手分けして探した方がええ」
「おたべさん・・・」
さくらはおたべの提案に頷き、バカモノ、ヨガと共に無名街へ行く事にした。さくらはカミソリとゾンビらに、マジ女の留守を任せた。
「カミソリ、ゾンビ・・・私達が戻るまで、マジ女を頼んだぞ」
「任せてください、さくらさん」
「マジ女は私達が、死んでも守ってみせます」
「火鍋!お前らも頼むぜ」
「はいっ!!」
さくら、バカモノ、ヨガは無名街へ、おたべは単身Rascalsのクラブ店<HEAVEN>へ向かった。果たして、ソルトとマジックを見つける事ができるのか?






























一方、マジックはRUDEBOYSのタケシとピーに無名街を案内されていた。荒廃とした街の中で貧しい生活を送る住民達の姿を見て、心の中で何かを感じていた。
「ここに住む者は皆、社会に捨てられて行き場を失った者達。俺達は皆、家族としてここで暮らしている」
「行き場を失った者・・・家族、か」
「血は繋がっていないが、結束は強い。俺達は家族を守り、そしてこの街を守って生活している。ただ、この無名街には一つだけ掟がある」
「掟・・・?」
「万が一、この街の住民が家族を危険に晒した場合、肺臓、腎臓、肝臓、脾臓、そして心臓・・・全部を置いていく事だ」
「五臓全部かよ・・・」
「あっ、タケシお兄ちゃん!ピーお兄ちゃん!」
するとそこへ、まだ幼い三人の女の子達がやって来た。
「皆喜べ。今日から新しい家族ができるぞ」
「ま、まだそうなると決まったわけじゃ・・・!」
「ホントに~!?」
「ああ。名前はマジック、その名の通り手品ができるらしい」
「すごい!見せて見せて~!」
「えっ?そ、その・・・」
「見せてやれ」
タケシとピーに促されたマジックは、仕方ないような気持ちでトランプを使った手品を見せた。子供達にカードを選んでもらい、そのカードを混ぜた状態から一番上に持ってくると、子供達は喜んだ。
「うわ~!お姉ちゃんすごい!」
「あ・・・そ、そう?」
「もっと見せて!お願い、お姉ちゃん!」
マジックは子供達に頼まれると、タケシとピーの顔を見てから頷いた。
「・・・うん、分かった」
それからいろんな手品を見せ続けると、女の子達は他の住民にも知らせ、多くの住民がマジックの手品を見て楽しんだ。そんな光景を初めて見たマジックは、心の中で呟いていた。
(この街の人達は、こんな風に笑顔でいられる。貧しい環境で生活しているのに・・・どうしてだ?)
「一つ話を聞かせてやる」
後ろからやってきたのはスモーキーだった。彼はマジックに話を聞かせた。
「優秀な奴が夢を描いた。優秀なだけに夢はどんどん実現し、そいつの周りには沢山の人間が集まった。そして夢が叶い、多くの人に祝福された・・・だがそれはそいつの最高の瞬間でしかなかった。優秀な人間は他にもいる、そして無能な人間も。夢はあったが無能な故に、夢が叶う事無く平凡な日々を送った。ずっとだ・・・両者の共通点が何か分かるか?」
「共通点・・・?」
「生まれてきたという事・・・夢が持てるという事だ」
「生まれてきた事・・・夢が持てるという事・・・だからこの街の人達は・・・」
「そうだ、生きる事を決して諦めない。だから俺達はもっと高く飛ぶ・・・この世界全体を見通せる程、空高くな」
スモーキーは話を終えると、タケシやピーと共に住民たちの下へ向かう。彼の話を聞いたマジックは、この街の住民達の事を少し理解できるようになった。
(貧しい生活を毎日送りながらも、一人一人が夢を持って生きている・・・彼らはそれを支え合い、やがて家族になった・・・)
そしてふと、ソルトやラッパッパ四天王、マジ女の仲間の事が頭に浮かび、考え始めた。
(私は一度夢を捨てた・・・でもあいつらと一緒なら、もう一度夢を持てるのだろうか?その夢を叶えて、仲間達と笑い合える日が来るのだろうか・・・?)
考える内に、胸の奥底が暖かくなるのを感じるマジック。無名街の環境の中で、彼女は何を得るのだろうか・・・