僭越ながら自分の話を。
これもとても塾のブログでは書けないようなお話。
自分の前職は、誰もが名前を知る超大手学習塾だった。
とはいえ、給料は安いし、退職金も雀の涙という極悪企業だったと認識しているが。
でもまあ今はそんな企業は珍しくはない。
知人からは、『年に2回、ちゃんとボーナスが出るだけまだましだよ!』という謎の慰めの言葉を頂いたものだった。
それはさておき、自分が入社したばかりの頃、その教室の売り上げは年間にして3,000万円ほどだった。
今考えれば、まぁまぁの売り上げではあったと思う。
その後の紆余曲折は大きく端折らせていただくが、色々な幸運にも恵まれて、自分の教室はわずか3年で売り上げが3倍まで上がった。
実にその額9,000万円以上。
(これはさぞかし自分の給料も上がるに違いない!)と気色ばんだのだが何と・・・。
年収はたったの200万円しか増えなかった。
もちろん、中途採用の社員が3年で、年収が200万円上がったのだから、そこだけ切り取ったらものすごいことなのかもしれないけど、9,000万円を売り上げて、自分の給料はその6%程度しかなかったのだ。
もちろん、大きな会社の庇護の下働くことができるというメリットは大きい。
余程のことが無い限り、ひどいリスクに遭遇することはないだろう。
しかし自分はもうバカバカしくて、すぐに退社することを決意した。
その後の紆余曲折はこれまた端折るが、本当に辞めて良かった。
今は念願のマイホームも建てることができ、好きな車に乗って、長期休みは好きなだけ海外旅行に行ける。
毎年前職の年収くらいの貯金もできているし、子どもたちの将来や老後に備えることもできている。
そりゃそうだ。
前職よりも売り上げは大幅に下がりはしたものの、自分で稼いだ分はすべて自分の収入にできるのだから。
もちろん、リスクは大きい。
税金や福利厚生にかかる金額は、雇われの身の頃とは比較にならないほど高いし、退職金だって出ない。
それでも、絶対に今の暮らしの方がいい。
あの時退職するという決断をして本当に良かったと心から思うし、もしもあの時ずるずると働き続けていたらと思うと・・・。
本当にぞっとするのだ。
なお余談だけれども、退職するときには異常とも思えるほどの執拗な引留めにあったし、それが無駄だと分かると、今度は一転して『3年間は教育業界の仕事をしない、独立開業をしない』などの旨が記載された誓約書にサインさせられそうになった。
もちろん弁護士に相談したところ、『そんな契約書には何の効力もない』というお墨付きを頂いたので、本社に送り返してやった。
【就職して安定した生活を送ることが正義で、独立開業などは危険だと刷り込まれた私たち日本人】
事実自分もそうだった。
独立開業するときは、毎日毎日不安で眠れなかったし、事実開業1年目はどん底の生活で、恥ずかしながら深夜アルバイトをしながら細々と生きていた。
また自分の友人に、毎月400時間以上働いて、給料は手取り15万円しかもらえていないという男がいる。
もう自分からしたら信じられない。
どう考えても、時給1,000円のアルバイトで250時間くらい働いた方がいいやん、と思う。
まあ自分は250時間ですら働きたくないけれども。
ところがその友人はこういうのだ。
『え!でも正社員で、福利厚生もしっかりしてるじゃん!』
もちろん、彼が悪いわけではない。
私たち日本人は、小さい頃からそういう環境で育ち、どんなに薄給でも正社員で働くことが正義、同じことをやるだけなのに、独立開業は危険なことで、愚かしいことなのだと教え込まれるのだ。
もちろん、バブル経済絶頂の頃の日本なら、親方日の丸社長の庇護の下働いて、安定して年収1,000万円以上、なんてことも当たり前だった。
しかしながら言うまでもなく、もはやそんな時代ではない。
年収1,000万円以上の世帯はなんと全体の5%。
平均年収も大体500万円届かないくらい。
しかしながらそれは飽くまでも平均の話。
中央値に換算するとなんと350万円ほどとも言われている。
誰が何と言おうと、年収350万円では生きてはいけない。
少なくとも、家を建てて家族を養い、栄養価の高い食べ物を食べて、好きな車や趣味にお金をかけて、子どもに充分な教育を与えて、年金がもらえるかどうかも分からない老後に備えて、毎年500万円以上貯金と保険にお金をかける、なんてことはできない。
清貧に甘んじることが美徳だと思うのであればそうすればいい。
だけどたった一度しかない人生、しかも時間は有限なのに、年収350万円でどうやって幸せになれるのだろうか?
いや、きれいごとは抜きにして、年収350万円では生涯の伴侶を得ることすら難しいだろう。
中高生の恋愛じゃないんだから。
と、いうわけで、もちろん大きなリスクは伴うかもしれないけれども、会社に勤めながらやる仕事を、独立開業して挑戦するだけで、ほとんどの人の年収は数倍以上になる。
そりゃそうだ。
雇われているということは、自分が稼いだ分をすべてピンハネされているというだけのこと。
もちろん、イニシャルコストやランニングコストなどもあるだろうけれども、それにしても年間9,000万円の売り上げならば、それもせいぜい2~3000万円程度だろう。
もう少し働き手に給料で還元しても罰は当たらないだろう。
断っておくけれども、30年、40年前のように、雇われの身でも十分にお給料がいただけているのであれば、その限りではない。
TOYOTAなどに勤めていて、役職がついているのであれば、おそらく年収は1,000万円を超えるだろうし、そういう人もリスクを冒す必要はないと思う。
しかし、これから少子高齢化で、ますます働き手が減る一方、養わなければならない高齢者がどんどん増え、物価も上がる一方の日本で、雇われの身でありながら何不自由のない暮らしを送れる仕事がどれだけあるのだろうか?
自分の考えを他人に押し付けることなんてできないけれども、これから世の中に出ていく中高生のみなさんには、ぜひこの世知辛い世の中を生き延びていくための思考力を身につけてほしい。
もう一度念を押す。
『今の日本で、年収1,000万円以上稼いでいるのはわずかに5%』だけ。
つまり、クラスに2人いるかいないかの割合だ。
残りの40名弱は、残念ながら年収350万円、いや、数年後にはもっと下がっているに違いない。
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