Yahoo!ニュースより。

 

著名なユダヤ人社会学者が見たハマスによる大虐殺「左派の一部が反ヒューマニストになってしまった」

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クーリエ・ジャポン

Photos: Guy Prives / Getty Images for Ringier; Tayfun Cokun /Anadolu / Getty Images

エヴァ・イルーズは、2022年に「社会学で最も影響力のある女性トップ10」に選ばれたほどの優れた研究者だ。ユダヤ人であり、イスラエルの大学でも教えるイルーズは学者として、個人として、ハマスとイスラエルの戦争をどう捉えているのか。米大手ユダヤ系メディア「フォワード」が聞く。 

【画像】ハマスに急襲された音楽フェスの生々しい現場 

2023年10月にハマスがイスラエルで1200人以上を虐殺し、イスラエルが容赦ない軍事報復に出て以降、さまざまな解説がとめどなく噴出してきた。だが私が読んだ限りでは、フランス系イスラエル人の学者・知識人エヴァ・イルーズの解説に匹敵するほどの、痛烈さと感性、研ぎ澄まされた知性、そして深い感情が入り交じったものはない。 イルーズの研究の焦点を考えれば、それは当然だ。旧来の概念を打破してきた、影響力のある社会学者イルーズは、政治や経済の領域における感情の働きに関する本を何冊も世に出してきた。 『冷たい親密性──感情資本主義の形成』(未邦訳)では、現代資本主義がわれわれの感情にどう影響してきたかを説明し、近著の『ポピュリズムの感情的生』(未邦訳)では、恐れや恨みといった感情がわれわれの政治に有害な影響を及ぼしてきたと論じている。18世紀の哲学者デイヴィッド・ヒュームが言ったように、われわれの理性がいかに多くの場合、情念の奴隷であるかを、イルーズはこれらの著作で明らかにしている。 イルーズは現在、イスラエルとフランスを行ったり来たりしている。エルサレムにあるヘブライ大学では社会学教授を務め、パリにある社会科学高等研究院では研究主任を務めているからだ。そんなイルーズに、10月7日以来イスラエルとガザで起きている、魂を痲痺させるような一連の出来事について聞いた。

足元の地面にぽっかり穴が開いた

──私生活でも仕事でもフランスとイスラエルを行き来されていますね。ハマスの武装勢力がイスラエルを攻撃し、1200人以上を殺害し、200人以上を人質として連れ去った日はフランスにおられたそうですが、その虐殺について知ったとき、まず何を感じ、そして考えられましたか?

 最初は、またハマスとイスラエルの小競り合いかと思い、深刻に受け止めていませんでした。それから1時間後、スタンフォード大学で学生をしている末の息子が現地時間の真夜中に電話してきて、イスラエル人WhatsAppグループの友達から自分の叔父と叔母がパレスチナ人に殺されたと報告があったと言いました。 それからはじめて、大事が起きていると気づいたのです。ニュースで、画像や動画と共に、境界線がやすやすと越えられ、大規模な虐殺が起き、軍隊もどこにも見当たらないと明らかになったとき、私はこれまでの実生活で感じたことのない何かを感じました。 まさしく、純然たる恐怖としか呼べないものです。ホラー映画を観たり、ひどい悪夢を見たりしたときにだけ、つかの間、感じる類いの恐怖です。 足元の地面にぽっかり穴が開きました。それこそが、ある穏やかな休日に家庭のプライバシーを侵して忍び込んだ敵の存在だったのです。残酷で陰惨な虐殺、殺りく者の歓喜、軍隊が市民を救うのを国全体がうめきながら待つ無力感──。 この出来事は明らかになるにつれ、悪夢の触感を帯びていました。その後の日々が、奈落をより深く、より暗いものにしました。

 

左派の一部が反ニューマニストになってしまった

──10月以来、知識人として、また個人として苦悩され、多くの文章でご自身の感情を読者たちと共有し、思考を形作られてきたことに感銘を受けています。ご自身の知的、感情的な変化についてお話しくださいますか?

 あなたがイスラエルに暮らしていて、私と同じくらい強く人権を信じているとしましょう。そうするとあなたはもっぱら現在の政治、具体的には(イスラエルによる)占領の愚かさと残酷さに気を取られることになります。 しかし、10月7日の一連の出来事は、世界中の芸術家や知識人、米国の大学キャンパス、さまざまな極左団体の反応と融合し、私にとって単一の出来事になりました。この単一の出来事により、私はユダヤ人の過去へと駆り立てられ、反ユダヤ主義はけっきょく死んでいなかったという、衝撃的な可能性と向き合わされたのです。 私はフランス、米国、イスラエル、ドイツに暮らす幸運に恵まれましたが、どの国も私に、人種差別の侮辱から守られているという感覚を与えてくれました。でもいま私は、表面下でふつふつと湧いてきた反ユダヤ主義に気づいていなかっただけなのだと考えざるをえなくなりました。 それはさまざまなイデオロギーでできています。ソビエトに端を発する反シオニズム、政治的にラディカルなイスラム教、イスラエルの正当性を傷つけるポストコロニアリズムなどもその一部です。 この反ユダヤ主義は前にあったものより屈折しています。進歩的な価値という名目で差し出されているからです。それによって、左派にものすごい混乱が生じ、左派のレトリックがハイジャックされ、イスラエルの左派自体が無力化されています。 その一例として、あるフェミニストの団体がフランスの左翼ニュースサイト「メディアパルト」上で、仏紙「リベラシオン」(中道左派として知られる)に掲載された書簡を糾弾する陳情書に署名しました。 そのリベラシオン書簡の「重大な過ち」は、ガザで起きていた大規模なフェミニサイド(女性殺害)を認識せよと呼びかけたことだというのです。 しかし、メディアパルトのいわゆるラディカル「フェミニスト」たちはこの書簡を、イスラエルによる「醜悪」な小細工としてしか見られなかった。つまり、イスラエルがフェミニサイドなどの言葉を使って、自らの犯罪を「ウーマンウォッシュ」(女性のためと偽ること)しようとしていたのだというわけです。 そのフェミニストたちは、残忍に犯され、殺され、拷問された女性たちへのいかなる連帯も示すことを露骨に拒否しました。 被害者がイスラエルのユダヤ人たちだったゆえに、左派のかなりの部分が人道に対する犯罪を告発・糾弾できなかった。それが私に示唆するのは、左派の一部が反ヒューマニストになってしまい、歴史的にその道徳の推進力だったヒューマニズムにもはや駆り立てられていないということです。イスラエルから人間性を奪うそのあり方は、一部の左翼政権による暗黒時代を彷彿とさせます。 私が支持するヒューマニスト左派は、両側でこれほど多くの人が無残に死んでいるときに、政治的にリベンジするようなことはしません。死や被害にヒエラルキーをつけるようなこともしません。 私はガザでのとてつもない死者数に胸が張り裂ける思いでいますが、それは私がヒューマニストであり普遍主義者だからです。しかし、時代の要請に応えられず、ポグロム(大虐殺)の犠牲者に共感も連帯も示せない、ユダヤ系の左派を含む左派の一部に対する尊敬を私は失いました。

Robert Zaretsky

 

以上、転載。

 

「私と同じくらい強く人権を信じているとしましょう。そうするとあなたはもっぱら現在の政治、具体的には(イスラエルによる)占領の愚かさと残酷さに気を取られることになります。 しかし、10月7日の一連の出来事は、世界中の芸術家や知識人、米国の大学キャンパス、さまざまな極左団体の反応と融合し、私にとって単一の出来事になりました」

 

ハマスの侵攻が、決して許されないと思うが、はたして「反ユダヤ主義」なのだろうか。

イスラエルは、この侵攻をナチス・ヒットラーと同じで、民族の安全確保を”ガザ侵攻”を正当化している。

パレスチナからパレスチナ人を追いだし、民族浄化をしているのはイスラエルではないのか?

 

「ハマスの武装勢力がイスラエルを攻撃し、1200人以上を殺害し、200人以上を人質として連れ去った」

今やガザ地区のパレスチナ人の死者は3万人を越えるという。

“屋根のない監獄”ガザで水や食料も尽き、餓死者も出ていると報道している、