Yahoo!より転載。

 

「お粗末」「遊園地みたい」と疑問視される「大吉原展」 「女性差別の負の歴史をふまえた展示」と主旨説明

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ねとらぼ

大吉原展のロゴはビビットなピンク

 3月に東京芸術大学美術館で開催される「大吉原展」について、吉原を美化しているのではないかとする批判が集まっている件で、主催者は「決して繰り返してはならない女性差別の負の歴史をふまえて展示」しているとあらためて主旨を説明した。

【画像】「エンタメ」「イケてる」など批判されたビジュアル 

 「大吉原展 江戸アメイヂング」は江戸時代に約250年もの長きにわたって続いた幕府公認の遊郭・吉原の文化や芸術について当時描かれた国内外の浮世絵などを通し、歴史的に検証しその全貌に迫るというもの。しかし、公式サイトの「ファッションの最先端」「エンタメ大好き」「イケてる人は吉原にいた」といった表現や、「他の遊廓とは一線を画す、公界としての格式と伝統を備えた場所」といった説明から、人身売買や性的搾取という側面に触れられていないことに対する違和感を訴える声が挙がっていた。

  脳科学者の茂木健一郎氏は自身のX(旧Twitter)で「アートに関わる国内のトップ大学としてあり得ないお粗末さ」と表現。「全体のキュレーション、文脈付けが致命的に愚か」「まったく調子外れの企画展が出てきた事実に衝撃を受けました。大幅な企画の変更ないしは中止は不可避だと考えます」と批判している。

  また、漫画家の瀧波ユカリ氏も「ここで女性たちが何をさせられていたかがこれでもかとぼやかされた序文と概要。遊園地みたい」と不快感をあらわにしている。

  Xではイベントについて「今のタイミングで風俗キラキラコーティングイベントにGOサイン出たの意味がわからない」「軽薄さが痛々しい」「全て男性目線の気分じゃない?」「人身売買の歴史がウォッシュされています」との批判の声があがっていた。 

 こうした意見は主催者側も把握しており、改めて展示会の主旨を説明した形だ。ねとらぼ編集部の質問に対しての回答は以下のとおり。

本展の開催について

 本展のテーマである「吉原」という場所は、江戸時代に幕府公認のもとで作られました。

  この空間はそもそも芸能の空間でしたが、売買春が行われていたことは事実です。同時に、徹底した非日常の空間演出をはじめ、廓言葉の創造、書や和歌俳諧、着物や諸道具の工芸、書籍の出版、日本舞踊、音曲、生け花や茶の湯など、文化の集積地でもありました。その結果、多くの文化人が集い、膨大な絵画や浮世絵、書籍などを生み出す場となりました。  本展は、今まで「日本文化」として位置づけられてこなかった「吉原」が生み出した文化を、美術作品を通じて再検証し、江戸文化の記憶として改めて紹介する趣旨で開催を決定いたしました。

  しかしながら一方で、上述しましたように、本展がテーマとする、花魁を中心とした遊廓「吉原」は、前借金の返済にしばられ、自由意志でやめることのできない遊女たちが支えたものであり、これは人権侵害・女性虐待にほかならず、許されない制度です。  本展では、決して繰り返してはならない女性差別の負の歴史をふまえて展示してまいります。

ねとらぼ

 

以上、転載。

 

この記事を転載した理由は、実は近々、大学の先生が「遊郭の被爆」というテーマでプレゼンするのを聴く予定だから。

広島原爆の実態・実相を研究・報告するレポートは多い。

最近、忠魂碑・従軍碑を調べています。

きっかけは、広島別院(浄土真宗本願寺派、安芸門徒)にある表忠碑。

この報告はいつかしようと思います。

調べているうちに、広島東照宮に「旌忠碑」という忠魂碑があることをしりました。

この碑は、西南戦争に第5軍歩兵第11連隊の従軍碑で、数百名戦死したようです。

「廣島ぶらり散歩」というHPを知り、そこを見ると「二千六百年記念碑」があることがわかりました。

説明・写真に「東遊郭」の文字を発見。

旌忠碑の再建に関わった郷土史研究家に話を伺うと、東遊郭は幟り旗用に寄進したものだと判明しました。

広島は日清戦争(1894年、明治27年~)で兵站基地となり、軍人・軍属、多くの人々が集まりました。

東遊郭は明治28年ぐらいにできたようです。

 

「大吉原展」が炎上。遊廓はこれまでどのように「展示」されてきたのか? 博物館や遺構の事例に見る享楽的言説と、抜け落ちる遊女の「痛み」(文:渡辺豪)

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Tokyo Art Beat

相次ぐ「大吉原展」への批判

「大吉原展 江戸アメイヂング」

ここ数日、「大吉原展 江戸アメイヂング」(以下、本展)がSNSを賑わせている。本展は、かつて江戸/東京にあった公娼街・吉原遊廓を取り上げたもので、今年3月から東京・上野の東京藝術大学大学美術館で開催される美術展である。本展公式サイトのステートメントには「『江戸吉原』の約250年にわたる文化・芸術を美術を通して検証(改行)仕掛けられた虚構の世界を約250件の作品で紹介する」とある。 マンガ家・瀧波ユカリ氏のX(旧Twitter)では、前述のステートメントに続く序文を指して、「ここで女性たちが何をさせられていたかがこれでもかとぼやかされた序文と概要。遊園地みたい。」と非難するコメントをポスト。ここを起点にSNS上での意見対立を生んでいたようだ。 筆者の私は遊廓を専門に扱う書店・カストリ書房を経営しているが、同店は吉原遊廓が戦後に何度か看板を掛け替えて現在は吉原ソープ街と呼ばれる性風俗街に、2016年にオープンさせたものだ。来店する購入者は8~9割が女性であることから、一連の動向にも、女性あるいは女性視点から提言するユーザーらが関心を寄せていたものと推察する。 本展にも通じる「江戸文化発祥の地」「煌びやかな遊興空間」「街の賑わい」といった文脈の言説を、ここでは便宜上、享楽的言説と呼ぶことにする。こうした言説はいまに始まったことではなく、商業出版物やネットを見渡してみれば、むしろ享楽的言説で満たされている。その意味で、本展を巡る動向は、発信者とテーマの掛け合わせが問われているものと理解できる。これまで遊廓なるものはどのように「展示」されてきたのか、私の取材成果を交えて紹介したい。

遊廓に関する展示の事例から

近年に絞ってみても、遊廓を取り上げた公共施設による常設展/企画展は本展に限らない。2021年、東京都立の江戸東京博物館は、約20年ぶりにジブリ作品を抜いて興行収入1位となったアニメ『鬼滅の刃』シリーズ遊郭編に絡めて、自館の展示を「煌びやかな遊郭の世界をご覧ください」と紹介、来場を呼びかけた。後日謝罪に及んでいる。 管見の限り、同館には肝心の吉原に言及する解説パネルは2枚しかなく、仮に吉原遊廓に「煌びやかな」側面が備わっていたとしても、それを理解できる環境とは言い難い。享楽的言説から訴求を図る姿勢からは、歴史を伝えるはずの同館が、吉原遊廓の歴史的意味づけを棚上げしてきたツケが窺えるものだった。 昨年2023年、横浜市立の横浜市歴史博物館では企画展『浮世の華 描かれた港崎』を開催、地元横浜にあった港崎(みよざき)遊廓を取り上げた。同館が所蔵する浮世絵を展示して同遊廓の成り立ちや地域社会での意味づけを解説するものだが、展示タイトルで明確に打ち出したとおり〝描かれた〟姿として一歩引いた展示がなされた。筆者も拝観したが、解説パネルには「当時の社会が仮託した遊廓の姿」といった文脈が織り込まれ、丁寧な展示設計のもと、充実した見学ができた。 性的搾取への問題意識が高まるなか、現状維持の展示と世相を読み違った広報、キャッチアップした世相を反映した展示、これらの明暗を2例はわかりやすく示している。わずか2年間の隔たりだが、問題意識が急速に社会に浸透している様も同時に窺い知れる。挙げた2例は歴史博物館であり、美術展に求められる視点とは異なるものだろう。ただし美術展であれ史実を足場とするのであれば、歴史や当時を生きた人々への丁寧な取り扱いが求められ、併せて近年の社会課題と隣接するテーマならば、一層慎重さが求められる。加えて、アートに社会課題を克服する原動力を期待するならば、「性売買とアート」は、むしろ核心に切り込むポテンシャルを持つテーマでもあったのではないか。が、反対に弊習への加担を指摘され、少なくとも現時点では「つまづき」以上の印象を残している。

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