Yahoo!ニュースより。
【漫画】広島原爆投下直後の貴重な体験話に14.2万いいねの大反響…「歴史を伝える漫画は大切なメッセージ」「生きて伝えてくださったことに感謝」などの声集まる
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コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、広島市出身の漫画家マツダ ミノルさんの『母方の祖母から聞いた8月6日の記憶』をピックアップ。
【漫画】祖母の家族がたくましく生きた原爆投下直後の貴重な漫画に「こんなに優しいタッチの原爆の話は初めて」
X(旧Twitter)で2023年8月6日に投稿したところ、14.2万件を超える「いいね」と共に、多くの反響コメントが寄せられた。本記事では、マツダ ミノルさんにインタビューを行い、創作のきっかけや体験話を聞いた際の様子など貴重なお話を伺った。
■原爆投下後の祖母の体験を優しい描写で描いた漫画
戦争体験者の話を聞く・知るということは、過去にあった現実を知り、今後二度と同じ過ちが起きないようにする上で大切であるといえる。しかし、戦争の内容はあまりにも悲惨であるが故に、つい目を背けてしまう人も多い。
今回、マツダ ミノルさんが描いた漫画は、1945年8月6日に広島市で起こってしまった原爆投下に関する作品だ。この作品は、戦争にまつわる話が苦手で見ることができないという人にも大変読みやすく描かれている。 作者であるマツダさんが祖母(当時小学4年生)に聞いた話を漫画にしたもので、原爆投下後にたくましく生きる家族の様子を描いたものだ。
家族の生活にフォーカスを当てていることと、マツダさんの作品に込める想いにより、原爆投下直後の生々しい描写はほとんど描かれていない。 当時、疎開していた祖母たちの安否を確認するために、父がケガした体で40キロの道のりを歩いてきたエピソードや、火傷を負ったにもかかわらず救護活動に参加した母など、壮絶ながらも強く生きる様子が伝わってくる。 また、家の跡地に簡易的な居住スペースを作った様子や、食事の状況、水が命を守る上で大変大切な存在であったことなど、貴重なエピソードが詰まっている。 原爆や戦争を知る入口として読みやすく、当時の貴重な様子を知ることができるので、ぜひ一度読んでみてほしい。
■作者・マツダ ミノルさん「戦争体験者から「生の声」を聴いて伝えていくことが大切なのでは」
――おばあさまから原爆が投下された日のお話について聞いたきっかけをお教えください。
元々広島市出身という土地柄、太平洋戦争の悲惨さを幼いころからよく聞いていました。 ただし今までは「大変だったんだな」と何処か他人事のように考えていただけだったのですが、祖母も段々と身体が弱っていっていることを実感したので、ここで改めて戦争体験者から「生の声」を聴いて伝えていくことが大切なのではないかと考え、祖母の話を漫画にすることにしました。
――お話を聞いた時のマツダさんの感想をお教えください。
悲惨だな、大変だな、と思ったのと同時に、昔の人の生き抜く力の強さに改めて驚かされました。 食べ物の質も量も現在の方がずっと良いはずなのに、私はあんなに歩ける自信がありません…。
――おばあさまは当時の様子を「覚えていない」と語る場面もあり、一番つらかった記憶は本能的に忘れようとしていたのかなとも感じました。当時の記憶を思い出すのがつらい部分もあると思います。お話をされているときのおばあさまの様子をお聞かせいただけますでしょうか。
辛そうに話していた、という風ではなく、意外と朗らかに話していた印象でした。 それは祖母が恐らく「直接被爆者」なわけではなく、「入市者(原爆が落ちた後の広島市に立ち入った人)」だったからだと思います。 そのおかげなのか、「原爆で酷い死に方をした方」の話よりも「原爆投下後のヒロシマでどうやって生き抜いたか」という点にフォーカスが当てられていて、それがとても新鮮でした。
広島の平和学習では原爆投下直後の話を聞くことが多かったので、「その後」の話を聞けたのは良かったです。 「直接被害者」であった曽祖父や曽祖母に話を聞くと、また違った記憶を聞けたかと思います。
――今作を描く際に心掛けたこと、大切にしたことなどをお教えください。 あまり悲惨さやグロテスク表現を出したくないな、と思いました。 上記でも記したように、祖母の思い出が「辛い」「悲しい」というよりも「その後どうやって生活が続いたのか」という内容だったためです。
――投稿へのコメントでは、「貴重なお話が聞けた」「絵の柔らかさから怖い原爆の話も読みやすかった」などといった声が多く寄せられていました。今回の反響をどのように受け止めていらっしゃるのでしょうか。
素直にとても嬉しく思います。 たくさんの方に読んで頂けるように、と願いながら書いたので本当に良かったです。 今回は母方の祖母の話でしたが、母方の祖父は満州帰りになります。 私は直接聞いたことはありませんが、祖母や母などが満州での出来事をたくさん聞いておりますので、いつか祖父の記憶も漫画という形に出来たらと思います。 いつになるかは分かりませんが…。
――最後に、マツダさんが今後も漫画を描く上で大切にしたいことや目標などをお教えください。
自分が「素敵だな」と思った感覚を大切に漫画を描いております。 そして私の感じた「素敵だな」という思いが、漫画を読んでくださる読者様に届けば本当に嬉しいです。