朝日歌壇、朝日俳壇~「朝日新聞」2018.9.2
《朝日歌壇》
【馬場あき子選】
弱冠二十歳沖縄に果てし兄の銘を撫づれば礎指先に鋭し
(銘=な、撫づる=なづる、礎=いしじ)
(高山市) 桐山 悟朗
※弱冠(じゃっかん)、こういう時に使う言葉でしょうね。ようやく成人、しかし沖縄戦で散った兄を想う。
【佐佐木幸綱選】
沖縄にすべてを捧げ身を削り痩せ衰へて知事逝きましぬ
(入間市) 有賀 政夫
※私には「逝きましぬ」が、どうしても「逝きませぬ」に聞こえます。
沖縄知事選、さて県民はどのような選択をするのでしょう?
辺野古への果たせぬ想ひ抱へつつ旅立つ知事の無念晴らせよ
(東京都)近藤千恵子
【高野公彦選】
父の忌の八月四日食を断ち戦死の父に一日寄り添ふ
(茨木市) 窪田 宜子
※もう何年かしたら、”戦死”という言葉も死語になるのかもしれません。いや、むしろ”戦死”が、ニュースのトップになるかもしれません。「戦後が戦前にならないために」
ミンドロ島南方山中水くれと叫ぶ俘虜記を閉じエビアンを買う
(京都市) 長谷川恵子
※私の父も南方に派兵された。工兵隊だったようだ。戦死を免れ、今の私がある。叔父は呉から潜水艦で出港、1941年12月17日、南洋に沈んだ。
いつまでも本土の捨て石ではならぬ気骨示して翁長氏逝きぬ
(三原市) 岡田 独甫
核兵器禁止条約に署名せぬ国にヒロシマ・ナガサキはある
(柏市) 菅谷 修
※被爆国・日本は、率先して禁止条約に署名すべきではないか。会議に”参加”すらしない態度はいかがなものか。
【永田和宏選】
「わたしたち」と言ふ時そこに沖縄を含めていたか翁長知事逝く
(神戸市)田中 陽子
※9月13日(木)沖縄知事選が公示されました。「沖縄空港の返還、普天間の返還は私しかいない」と見栄を切っていた立候補者がいました。知事の力で返還できるなら、とっくにできているのでは?
辺野古「NO!」ボード掲ぐ七万に翁長雄志は「帽子」を遺す
(東京都) 荒井 整
「翁長さんがんばつたね」と文太さん基地なき島へ想ひのこして
(高松市) 島田 章平
《朝日俳壇》
【高山れおな選】
見上げよと真青なる空原爆忌 (高萩市)小林 紀彦
※原爆忌を詠う俳句や短歌も減りました。
【長谷川櫂選】
敗戦日炎に中の乳母車 (藤沢市) 前田なみき
※「終戦」と「敗戦」の意味の違いに注目する人も減りました。”無関心”は、戦争を生む下地になります。