天風録「荒らされたチビリガマ」~中国新聞
「天風録」とは、朝日新聞で言えば「天声人語」にあたる。
このニュースは、全国ニュースでも取り上げられ話題になった。
少年たちの仕業のようだ。
若者の行動に愕然とした地元の方が「沖縄の先生は、平和教育を続けてほしい」と言っていた。
当初は「政治的な」問題をはらんだものかと思われたが、心無い若者の行動だった。
平和公園の千羽鶴ではなかったが、平和公園の花の鉢が壊された事件があったことを思い出した。
実は、その事件は、某中学生たちの行動だった。彼らはいわゆる「問題行動」を抱えた生徒だった。
彼らに平和教育は通じないのか?8月6日も8時15分も覚えていなかっただろうし、平和公園がどういう場所か、自分たちの行動がどういう意味を持つのか認識が欠けていたのだろう。
沖縄も広島も、戦争(沖縄戦、原爆)の風化が進む。風化は若者から進む。かれらこそ、平和教育が真剣に向き合う相手なのかもしれない。
「意味がわからない」とは「無知」につながる。無知は無関心のことであり、無知・無関心の中に、実は戦争肯定の芽が生まれるのではないか。
中国新聞・平和メディアセンターHPより転載。
天風録 『荒らされたチビチリガマ』
17年9月14日
「艦砲ヌ喰(ク)エ残(ヌク)サー」という沖縄の島言葉がある。「鉄の暴風」とも形容される艦砲射撃の地獄を生き延びた者たち、という意味である。辛酸をなめた人たちが、万感の思いで口にしてきたに違いない。そして死者への供養とも思い、忘れたい記憶を伝えてきた▲沖縄では、あまたのガマ(洞窟)に赤子まで含む住民が避難した末、戦闘に巻き込まれる。読谷(よみたん)村のチビチリガマでは「集団自決」で83人が犠牲になった。そのガマが何者かの侵入を受けたことが、きのう報じられた▲遺族にとっては、死者が何度もあやめられるような、堪えがたい苦痛だろう。本来立ち入れない内部の遺骨や遺品が荒らされ、千羽鶴まで引きちぎられていた▲広島では、平和記念公園の千羽鶴が焼かれたことが何度もある。原爆慰霊碑の碑文にペンキがかけられたこともあった。意見があれば、言葉という道具を用いればいい。あの戦争の過ちを先人はそう反省したはずだが▲沖縄戦の研究者、石原昌家さんは「ガマ体験」を勧めている。現場で証言を語り伝え、明かりを消す。闇の中で顔面蒼白(そうはく)になる若者もいるそうだ。卑劣な行いにもくじけず、過酷な記憶は伝えられていくと信じる。
(2017年9月14日朝刊掲載)
(2017年9月14日朝刊掲載)