当塾の書棚にある本から「日本語教育」に関連するものをピックアップしていきます。
ヴァーチャル日本語 役割語の謎(金水敏)
これは日本語学校のときの先生に教えてもらって買って読んだ本です。
相当おもしろいんで、言葉に興味ある中高生は一回読むといいと思いますよ。
「役割語」というのはアレです。
その言葉を使うことで、人物のキャラクターが明確になる言葉ってあるじゃないですか。
この本の中に出ている例そのままですけど、
「わしは~じゃ」と付けると「おじいさん」であることが分かりますよね。
つまり、この「わしは~じゃ」という言い方は「おじいさん」という役割を表す「役割語」だというわけです。
「~ザマス」は金持ちの奥さんを表す役割語。
「~アルヨ」は中国人であることを表す役割語。
「~ナリ」はコロ助であることを表す役割語なのです。
あなたのおじいさんは「わしはおじいさんなのじゃ」って実際に言います?
実際のおじいさんがまず言わない「わしは~じゃ」という言い方が、なぜ「おじいさん」を表す記号として通用するようになったか、そんな理由と経緯が書かれているわけです。
おもしろそうでしょう。
おもしろいんですよ。
ちなみに、古文の先生がよく助動詞「ナリ」の例でコロ助を挙げて、
「吾輩はコロ助ナリよ」の「ナリ」を助動詞の「なり」として説明すると思うんですけど。
(今はコロ助が生徒に通じにくくなったのでアレですが)
でも、わたしはこの説明間違っていると思うんですね。
助動詞「なり」は
「ならず/なりけり/なる時/なれば」
のように活用するじゃないですか。
「じ」のような例外はあれど、基本的には活用があることが助動詞の基本条件なわけです。
でも、コロ助が「吾輩はコロ助ナレども~」のように「ナリ」を活用させるかというと、絶対ないわけですよ。
ということは、あのコロ助の「ナリ」は、もう助動詞「なり」として捉えるべきものではなく、完全に「コロ助のキャラクターと、断定の意味」を同時に表す「終助詞」である、と分類したほうが理屈に合うのではないでしょうか。
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