ただ、ひとつのジャンルが真の意味で市民権を得るには、突き抜けた“スター”の存在が不可欠。プロ野球であれば“王・長嶋”、サッカーなら三浦知良こと“キング・カズ”など、老若男女の誰もが知っているスターがそのジャンルを定着化させ、そのスターに憧れた後継者たちが新たにスターとなり、そのジャンルを熟成させていく。そう考えると、コスプレ分野においてブレイクスルーしたスターとなれば、やはり“えなこ”となる。えなこのTwitterのフォロワーは約57万人、コミケでも囲み撮影が軽く数百人を突破するレベルであり、えなこは今の日本では一番成功しているコスプレイヤーと言っていい。では、“ポスト・えなこ”となるといったい誰になるのだろうか。コスプレ界で言えば、伊織もえ、宮本彩希、五木あきら、火将ロシエル、くろねこ、といった名が挙げられるかもしれない。ただ、彼女たちはコスプレ界では有名だが、あくまで“業界内”のことであり、普通的な知名度となるとまだまだ低いと言わざるを得ない。かつて、御伽ねこむというコスプレイヤーも人気を博したが、漫画家との結婚を期に表舞台からは姿を消している。となれば、えなこは現時点では、やはり史上最高のコスプレイヤーとなるのだ。
えなこの最大の強みは、可愛くてスタイルがよいのはもちろんだが、自ら“プロコスプレイヤー”と名乗るように、プロ意識が非常に高いところ。コスプレ衣装にも人一倍こだわりコストをかけ、完成度も高い。さらには単にコスプレを公開するだけではなく、チャリティー撮影会を主催するなどセルフプロデュース力にも長けており、男性のみならず同性の女性や、海外でもアジアを中心に人気が高いのである。しかし、必ずしもコスプレファン全員がコスプレ文化のメジャー化を望んでいるとも言い切れず、マイノリティーであることへの優越感を感じていたり、そもそも市民権を得る必要は無いと考える一部ファンがいることも確か。一方で、“文化”として成熟させていくには、ある程度開かれた健全な文化を目指す必要もある。コスプレ文化が、真の意味で市民権を得るためには、その“バランス”が需要な要素になるだろう。そんな、えなこをテレビ業界が放っておくはずもなく、『ナカイの窓』(日本テレビ系)や『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)、『有吉ジャポン』(TBS系)など数多くのテレビ番組にも登場している。
『ナカイの窓』に出演した際には、「私くらいのレベルの方は他にいない」と発言するなあど、実際えなこクラスのコスプレイヤーは他にはいないこともまた事実。狩野英孝MCの番組『エイコーさん』(フジテレビ系)では、最高月収が1500万円だったことを明かすなど、やはり“プロ”のコスプレイヤーとしては、ぶっちぎりの存在であることは間違いないだろう。こうしたいわば“特殊”な環境やある種の文化的な特徴が、ポスト・えなこを生み出しにくい状況にしていると言えるかもしれないし、言い換えれば、えなこレベルのルックスを持ったガチオタでセルフプロデュース力も高く、コスプレ愛を感じさせるコスプレイヤーが、現状では実際に存在していないということなのかもしれない。次になぜ、“ポスト・えなこ”が現われないのか。コスプレ界独特の“敷居の高さ”もあるだろう。原作を読んだこともない作品のコスプレをすれば、すぐに見抜かれて「にわか」と敬遠されることもしばしば、キャラに“愛”を感じられないコスプレイヤーが人気を得ることは難しいだろう。また、ある程度の知名度があるモデル、レースクイーン、アイドル、グラドルなどがコミケなどの大型コスプレ活動でコスプレを披露するパターンも増えているが、“二足のわらじ”もコスプレ愛という観点からでは敬遠され、コスプレイヤーとしての人気を獲得していくことはかなり難しい。