身体的な疲労は相変わらずであるが、ふと思い立ったので記してみようと思う。
それは宝飾品の展示即売会からである。
年に一度、その会社は全社を一つの会場に収束し、得意客をはじめとして上客相手に大規模な展示会を開催している。
普段店頭には並ばない目玉商品や、その会場限定価格で販売される数多の貴金属がズラリと展示される。
販売員は一つのコーナーにつき、最低でも5人以上はおり、通り過ぎる客を見てはすかさず声をかけている。
そもそも、その会場にやってくるには、各所属店から配られる招待状代わりのダイレクトメールが必要であり、客の一人一人に絶対と言って良いほど担当員が付くのである。
そして注目すべきはその買い手達の姿にある。
何故なら、客の実に99%が女性であり、その大半が60歳を優に超えていそうな高年齢層。おまけに遠方からわざわざ団体バスでやってくると言うのだ。
即ち、地方からやってきている人間が大半を占めている。
この客達を言葉巧みに操り、高価な宝飾品を購入させるのが主催側である企業の係員達でるのだが、この光景には接客業界に身をおく私も頭が下がる思いである。
なにより、相手を心底誉めちぎりまくるのだ。そこに演技っぽさは微塵もない。そりゃ探せば粗のある奴はいるかもしれないが、買わせるという観点でみれば、べたすぎる褒め言葉も、販売員達の口に乗せれば極上の賞賛に代わる。
「お似合いですよ~」
「●●さんの為に取っておいたんですよ~」
「こっちのほうが合ってますよ」
「今日のお召し物もすっごく綺麗ですよ」
「●●さんに買って戴かなきゃ、私帰れませんから!」
etc
日常ではまず考えられないこれらの文句だが、客にしてみれば違う。むしろ、その会場にいる本当の理由は、そこにあるのではないかと感じられた。
自分はお金を払う。だがそれは純粋に宝飾品が欲しくて足を運んでいるのではなく、つけてみて、賞賛を浴びたいから。たくさんの人に誉めちぎってもらい、手厚いもてなしをうけ、再来店の約束をする代りに更に自分を上客として取り扱ってくれる。
そんな特別な時間を過ごすがために、彼女たちは高価な宝石を身にまとっているのではないか?
盛りを過ぎた壮齢を迎えてゆくにつれ、他人からの見方はもちろん、結婚していれば相手にだって愛想の尽きた付き合い方をされているかもしれない。
だが、お金さえあれば、嘗て味わったこともないような賞賛を得る事が出来るのだ。
話し相手がいない。
だがこの店に来れば、自分を相手してくれる。
友達もいない。
だがこの店に来れば、自分はたくさんの友人に囲まれる。
買わすものと買わされるもの。
それは果たしてどっちなのか?
すこし考えてみたくなった・・・