随分と前の話ですが、保護者の方と面談した際に、
「確かに、子どもには夢を持ってもらいたいと思うし、
やる気になってもらいたいんだけど、
あまり大それたのは困るんですよ。」
と言われたことがあります。
「先生、あまり、子どもを焚き付けないでくださいね(笑)」
この発言をされた方は、ある地元の企業経営者です。
この方の真意は、
「自分の子どもを含め、地域の子どもたちには、皆、将来を夢見て頑張って欲しいのだけれども、その一方で、東京の大学なんかに行かれた日には、ほとんど帰って来てくれていないという現実があるのですよ。」
というところにあって、地方での人材確保のことを心配されるがゆえのご発言でした。
その方は、大学に限らず首都圏の中学や高校の持つ魅力を十二分に理解された上でこのような発言をされているのです。
石川県に限らず、地方経済界を牽引していらっしゃる方々の多くは、
同じことを思っていらっしゃいます。その心境は非常に理解できるところであります。
今月初旬に行われたあるセミナーで、
「日本のこれからの人材、つまり、若者は、
もっと世界を目指さないとダメだ」
もっと世界を目指さないとダメだ」
「大学もハーバードやケンブリッジを目指す者がもっと出るべきだ」
「財界もこういう若者を応援しないといけない」
という意見が相次ぎました。
一方で、
「そういうふうになればいいとは思う。
だが、世界を目指した若者は、日本に帰って来てくれるだろうか」
「海外に行ったまま帰ってこないのでは?」
だが、世界を目指した若者は、日本に帰って来てくれるだろうか」
「海外に行ったまま帰ってこないのでは?」
という意見もでました。
前述の「地方」が「日本」に置き換わっただけですね。
その場にいらした日本でも1,2位を争う中高一貫校の校長先生がこう言われました。
「数年前、我が校から、ハーバードへの進学者を輩出した。だが、彼が日本に戻って来て働こうとしたとき、雇おうと言ってくれたのは、あるIT企業1社だけだった。(執行)役員待遇で雇ってくれた。日本の企業が意識を変えないとダメだ」と。
確かに、世界最高峰のハーバードを出て、平社員からスタートでは、日本に帰ってくる人は、
いなくなるでしょう。
これは、難しい問題です。前述の地元の企業経営者も、ある意味ジレンマに陥っていらっしゃるようです。「確かに、これからは、グローバルに活躍できる人材にもいてもらわないと困る事態になることは、わかっている。縮こまっていてはダメなんだということも。」とも仰っていましたから。
産学協同などという言葉はありますけれど、今までの日本は、これは、どちらかというと、技術の分野に限られていたように思えます。
ここで、話を端折らせていただきますが、高校大学を卒業した人の殆どは民間企業に勤めるわけです。だから、もっと企業が学校教育にコミットしてもいいのではないかというか、むしろ、積極的にコミットすべきで、その方が、子どもたちも、学生時代に、具体的な目標が持ちやすいと思うのです。企業のメリットは、人材の確保です。
大学にもアドミッションポリシーの明確化が求められる時代、
企業も
「わが社にはこんな人材に来て欲しい」
「そのために、高校大学ではこんなことを学習して来て欲しい」
「わが社に来てくれるのであれば、給与の一部を奨学金として前倒しで支給しよう」
なんていうこともあっていいと思います。特に3番目が大事で、ご家庭の経済状況から進学を断念せざるを得ない子どもたちに夢と感謝の気持ち、入社したら一生懸命頑張ろうという気持ちを喚起させるのではないでしょうか?
下手なCSRをやるより、企業にとっても具体的なリターンが期待できます。しかも、明確な思いを持って入社してくれるのですから、そういう人材はロイヤリティも高いでしょう。
また、親や、学校にしてみれば「何をやっていいかわからない」という夢を持てない、無目的な若者に、わが子や教え子がなってしまうリスクを減らせることが期待できます。
地方の経済界の方々におかれましては、
こういうこと、本気で考えてみてはいかがでしょうか?