目の前は真っ暗
主治医によると 「 いつまた意識不明になるか
わからない。ひどい後遺症になるかもしれない。
社会復帰は無理でしょう 」。
゛なぜ こんなことに ・・・
何も悪いことなんかしていないのに
どうして ・・・何かの間違いなんだ ・・・
これは夢なんだ ・・・・・・・
もうじき目が覚める - もう少しの我慢なのだ。゛
しかし激痛と高熱が いやでも これが
夢でないことを教えてくれる。
検温 食事 薬 回診 手術部の消毒。
食事 薬 検温 昼寝 身体の清拭。
食事 薬 検温 回診。
・・・・ これが一日のすべて。
拷問のような痛みと無期懲役のような生活。
何の見込みも希望もない。 気が狂いそう。
時間のたつことだけが願い。
眠ることだけが 救い。
眠ることだけが痛みと絶望的な現実を ・・・
忘れさせてくれる。
それにしてもあの記憶は何なんだろう。
頭がおかしくなったんだろうか。
何度も確かめた。記憶はしっかりしている。
何の異常も認められない。
では あれは何だったのだろう。
忘れなければという思いと ・・・・
確かめなければという思いに揺れる。
自分が自分から抜け出して 自分を眺め
故郷をさまよい そして死後の世界へ行って
生還したなんて - 有り得ないことだ。
しかし ・・・・ 何かが ・・・・・・
変わったような気がしてならない。
自分の中にもう一人 誰かがいるような ・・・
感覚が あるのだ。
そして 無数の未来の記憶 ・・・・・・・・・・
これは何を意味するのだろう。
自分はもとの自分なのか それとも ・・・
別人として生き返ったのか。
自分に未来の記憶がインプットされたのか。
それとも 未来から来た別人に自分の記憶が
インプットされたのか。
だめだ こんな事を考えてはいけない。
あれほどの衝撃を受けたのだから ・・・・
少しくらい異常があって当然なんだ。
考えないようにしよう。
忘れなければいけない。