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世界の方向は臓器温存なのに手術に固執する日本の医者

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   一方、逸見さんのケースでは、内視鏡で早期がんと見えたものの開腹したら腹膜転移が存在していたのです。腹膜移転が一つでもあれば治らないのは医学上の常識です。ですから逸見さんが治る可能性は最初からゼロだったのです。要するに逸見さんの早期胃がんは
「本物」のがんであり、しかし本ケースの胃がんは「がんもどき」だと考えられます。「がんもどき」が圧倒的多数を占めるタイプもあります。
癌が胃の粘膜上皮内にとどまる「粘膜内がん」がそれです。患者1000人を集めても、どこかの臓器に転移しているケースは1人いるかどうかという程度です。

   この粘膜内がんは胃を切除せずに、内視鏡でがん組織だけを切除することができます。それで治るとされるのですが、本来が「もどき」であるので放っておいても問題はなく死ぬことはないのですが、切除したので「治った」と言うと患者たちに誤解を与えることになります。本来が「もどき」であるので、それゆえに上皮内にとどまる粘膜がんは、欧米では「がん」という診断すらされていません。良性を意味する「異形成」と診断されるのです。しかしそれを日本の医者たちは「がん」だと称して治療に追い込み、商売繁盛を図っているわけで、そういうおぞましい構造があるわけです。

   それにしても早期がんを放置した場合、病変が大きくならないばかりか、がん細胞が消えてくるというのは読者にとって驚きでしょう。しかし実はそう珍しいことではなく、私が診てきたがん放置患者のうち、もう一人の早期胃がんが消失しています。以前、私が『患者よ、がんと闘うな』を出版した後、いわゆる「がん論争」が起きたのですが、そのとき「がん検診擁護」の立場から先頭に立った丸山雅一癌研病院内科部長(当時)は、次のように公言しています。「早期がんを3年放置してもほとんど変化しないということは、日本の専門家にとって常識以前のことです」と。

   実際には、そんなことを言っていたのでは「がん検診擁護」にはならないのですが、要するに専門家たちは早期胃がんがなかなか大きくならないことや、本ケースのように消えてしまう早期胃がんがあることを知っているのです。「胃と腸」という医学専門雑誌のバックナンバーを読み込んでみれば、そういうケースがたくさん出てきます。であるにもかかわらず一般の人々がそういうことを知らないのは、医者などの専門家が話さないからです。なぜなら人々が知るようになれば、当然検診を受ける人々が激減するはずであり、それを怖れているからと思われます。

   スキルス胃がんについても、一般の人々が知らないことがあります。
   逸見さんが手術後10ヶ月で亡くなったことなどから、1年もたない、悪くすると数ヶ月だと人々は思っているはずです。最近もある有名人が、腹部症状があって検査したらスキルス胃がんが発見され、本人は「がんと闘う」といって入院したが、2ヶ月で亡くなった、という報道がありました。そして一般の人々からは、早くに亡くなったのはスキルス胃がんだから当然だ、と受け取られていたようです。

   しかし実は、スキルス胃がんは手術さえしなければ、人々が思っているよりもずっと長生きできるのです。私はスキルス胃がんで手術せずに放置した患者を何人も診て来ましたが、1年以内に死亡した人はいなかった。逸見さんのようなスキルス胃がんでも、何年も生きた患者が何人もいます。胃の手術後、退院できたはいいけれどやせ細り、元気をなくしてしまう患者さんが多いのです。私はそもそも胃がんの手術で胃を全摘したり、大きく切除したりすることは原則として間違い(誤り)であると考えるに至っています。

   他の臓器に転移している「本物のがん」ならば、胃を全摘しても
治ることはありません。痛い思いをするだけ損です。しかも胃の全摘や大掛かりな胃切除などの手術によって、患者の体は甚大なダメージを被ります。それが食生活や通常の生活を大きく損ない、本来の寿命を縮めてしまうことになるのです。さらに問題なのが、日本の胃がん手術が胃の周囲のリンパ節を切除するリンパ節郭清(かくせい)、つまりごっそり切除してしまうことをルーチン化(当然行なうべき手順)としていることです。これが患者に大きな後遺症をもたらすことになるのです。

   こうしたD2手術はこれまで表向きは、生存率の向上のためと
なっていましたが、しかしすでにイギリスとオランダの臨床試験では、生存率の向上に寄与しないという結果が明らかにされています。
それなのに未だに、D2手術に固執している日本胃癌学界は猛省するべき必要があるのではないでしょうか。

   患者にとって重要なことは、がんの手術を受けると必ず、何らかの不利益」が生じることです。手術で臓器を切除すれば、生活能力が低下するのは避けられません。傷跡が開いてしまう縫合不全や出血、炎症など、手術に伴う不都合や、失敗などから生じる合併症や障害など、生活能力に重大な影響を及ぼします。

   しかし現在、がん治療における世界の大勢は、可能な限り臓器を温存する方向へ向かっています。何が何でも手術で取り除くというこれまでのやり方は、がん患者の生存率向上に貢献しないばかりか、がん患者の生活の質を低下させてきたことは確かなことです。無治療のまま様子を見るという選択は、究極の臓器温存療法と言えるのかもしれません。


転載元 転載元: dreamland