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そもそも、少しでも科学的教養がある人なら、頭に100V以上の電圧をかけることについて、その危険性、野蛮性は容易に理解できるはずです。実際には精神科医が用いる電気ショックは200V~300Vに及んでいるのです。脳が焼け焦げたり、あまりの苦痛に顔をゆがめる姿は想像に難くありません。脳科学が発達したと言っても、神秘なる脳の1%もわかっていないのが現状です。繊細な電気信号を発する脳に、無理やり電圧をかけることなど、誰がその結果を予測しうるのでしょうか。
電気ショック療法は、イタリアの精神科医、Cerlettiによって発明されたと言われています。Cerlettiは1938年に電気ショック療法を発表しましたが、その頃は身体療法が大流行でした。「てんかんと統合失調症は同時に起こらないようなので、人工的にてんかん痙攣を起こせば統合失調症は治療できるのではないか。」という仮説がそれらの治療法の支えとなっていました。当然その仮説自体が誤りなのでしたが。
ともかく、当時の精神科医はインシュリンを使ったり、電気を使ったり、カルジアーゾを使ったり、色々な方法を使っててんかん痙攣を引き起こすことを試みました。日本では、下田光造がいた九州大学で身体治療の実験が積極的に行われていました。彼らは本当に何でもやりました。持続睡眠療法、マラリア療法、電気ショック療法、インシュリンショック療法など、危険な療法を次々と実践しました。その中でも、下田の部下、安河内五郎は、Cerlettiが電気ショック療法を発表する前から、既に電気ショック実験を行っていました。
豚を屠殺しやすくするために電気ショックで豚をおとなしくさせる様子を見て電気ショック療法を思いついたCerlettiもすごいですが、安河内も負けていません。頭蓋に穴を空け、注射針2本を脳膜を突き破って脳髄まで達するまで突き刺し、注射針をそのまま電極にして、脳に直接電気ショックを与えるという手法で実験していました。Cerlettiに発表を先に越された安河内は、その後向笠広次と共同し、Cerlettiと同様頭皮上からの通電法に切り替え、日本で最初の電気ショック療法(電気痙攣療法)を1939年に発表したのでした。
そんな電気ショックですが、恐ろしいことにその根本的な手法や原理は、当時から大して変わっていません。今やその電気ショック療法を用いる病院が増えてきました。「安全」「改良」「即効性」など、この療法の説明には、とても素敵な言葉が並びます。しかし、もしも自分が、家族が、友人が電気ショックを受けそうになったら、主治医に必ずこう言って下さい。
「先生がそれを受けて安全なことを証明して下さい。」…と。