秋の最盛期。
夜明け前にホーム河川の河口に向かうと、連休初日ということもあって両岸はアングラーで埋め尽くされていた。この辺りの水深は、深いところで6 mほどあり、纏まった雨が降らなければ、ほとんどが海水で、淡水は表層1 mの塩分濃度を僅かに変化させる程度である。

塩水は底を這うように河川に入り込んでおり、シーバスは、この塩水くさびを利用して河川を遡上すると言われている。時に海水の届かない清流域にまで遡上するシーバスであるが、遡上したシーバスがしばらくその流域に居着いているのか、海水と淡水を短時間で行き来しているのかについては、実は良く分かっていない。

 

東大のグループがマイクロCTDデータロガーを用いた興味深い研究を行っている。


N. Miyata, et.al., "Micro CTD data logger reveals short-term excursions of Japanese sea bass from seawater to freshwater (マイクロCTDデータロガーはスズキが海水から淡水へ短時間移動する行動を明らかにした)," Aquat. Biol., vol. 25, pp. 97-106, 2016.

 

調査は、2014年11月に大分県の大野川および大分川で実施された。

ルアー釣りにより捕獲された4匹のシーバス(体長:488〜775 mm)にデータロガーを取り付け、捕獲地点と同じ場所に放流した。データロガーは、一定時間(53〜158時間)データ(水温、塩分、水深)を取得すると、自動リリースシステムにより魚から切り離される仕組みになっている。リリースされたデータロガーは、VHF信号による位置特定により回収された。4匹のシーバスのうち3匹は大分川の淡水域(河口から7.5 km地点)、もう1匹は大野川の海水域(最河口地点)で捕獲された。

 

データロガーはシーバスに関するいくつかの興味深い習性を明らかにした。

 

〇昼夜周期パターン

すべての魚は明確な昼夜周期パターンを示し、夜間に低塩分の浅い水域へ浮上することが多かった。データを見ると、日中は水深2~3 mの高塩分の水域で定位していることが多く、夜間は、水面直下から4 mより深い水深まで広範囲を移動している。特に、水面直下の淡水域に姿を現したのは夜間に限られていた。

 

この理由を著者は以下のように考察している。

夜間の浮上の妥当な説明としては、スズキが産卵後のアユを捕食していた可能性が考えられる。アユは10月〜11月に産卵するため、本研究の時期と一致する。アユはスズキの主要な餌種の1つであり、この季節にスズキの胃内容物からも頻繁に確認される。アユは主に16:00〜20:00の間に淡水で産卵し、産卵後まもなく死亡する。そのため、産卵後に浮遊しているアユを捕食することは、スズキにとって効率的かつ省エネルギーな採餌戦略となる。

 

〇淡水移動の持続時間

さらに詳細な時間スケール(サンプリング間隔:1秒)で解析したところ、淡水移動の持続時間は、4匹中3匹で1時間未満、残り1匹でも6時間未満であった。全体として、淡水侵入の99%以上は10分以内に終了していた。

 

〇浸透圧調節システム

すべての魚は、海水から淡水を行き来する際に同様に広い範囲の塩分を経験したが、平均塩分は、いずれも海水塩分の3分の1以上であった。したがって、本研究のスズキは平均的に高浸透圧環境にあった。これは、調査地点で4匹中3匹が淡水河川で捕獲されたにもかかわらず、体液の浸透圧調節システムが海水環境に順応している可能性が高いことを示す。
スズキが海水から淡水へ短期的に移動することは、生理学的・エネルギー的コストをかけずに低浸透圧環境を一時的に利用する有効な戦略である可能性がある。
 

アングラーの立場から、本論文から得られる教訓をまとめる。
※大分県の大野川と大分川の河口(0~7.5km)付近における調査である。

 

落ち鮎シーズンのシーバスは、日中は水深2~3 mの海水域で定位していることが多く、夕マズメから夜間、朝マズメにかけて、淡水のシャロー帯や深場のボトムに捕食を目的に侵入する。
夜間のシーバスは、塩水から一時的に淡水に侵入し、10分以内に捕食をしてまた塩水に戻るという行動を繰り返している。

特に上流部では、10分以内に海水に戻れる水域を意識する必要がありそうである。

また、研究の本題からは離れるが、本研究は、リリースした魚が、弱ることなく、すぐに通常の捕食パターンに戻ることを示す貴重なデータだと思われる。