アワビとプライバシー | こころのネタ帳

アワビとプライバシー

地井ばりにぶらりと散歩して戻るとおじさんが私の席に座っていた。
仕事中ではあったのだが猛烈に眠くなったので、少し前に貨物用エレベーターホールへ体を伸ばしに行っていた。
猛烈に眠くなったのにはお昼の鯛の煮つけとしらすご飯が一役買っているに違いないが、それはそうと、その短い間に私の席が占拠されていたわけである。
アワビのおじさんはパソコンをいじっており、覗き込むとメールを見ていたようですぐさま画面を替えた。
ここで、アワビのおじさんとは、大学が同窓の年齢的にはずいぶん上のおじさんで、学校が同じというだけで先輩面してくるいやなおじさんのことである。
以前ベロベロに酔っ払ったときに4次会くらいでアワビのステーキを奢らされた経験があることから、憎しみを込めて今回はアワビのおじさんと呼ぶことにする。
そいつが、私のパソコンでメールを見ていたわけである。
性善説で生きてきた私にとっては、ログインし直して自分のメールを見ているだろうと考えるのが常套であるが、アワビのおじさんに関してはそのアワビの件があるのでお一人様限定で性悪説を適用している。
アワビのおじさんは私の疑いに気づいたのか、私に向かって貝柱をむき出しにして、人のメールを覗き見るほど下世話ではない、自分のメールを見ているのだと主張してきた。
なんやかんや言いながら奴が席から離れたので自分のパソコンを確認してみた。
会社のイントラネットもyahooのログイン状態も私のIDのままであり、案の定、アワビ(おじさん略)が私のメールを覗いていたことが立証された。
立ち上がり文句を言おうと思ったがすでに奴はどこかへ消えてしまっていた。
泣き寝入りである。
貝さながらに口を閉じ、クレジットカードでものすごく大きなアワビを奢らされたあの日と同様に泣き寝入りである。


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