はじめてラウンドしたのは、20年位前だろうか?
会社のコンペで訪れた。
当時の幹事さんは、新しいもの好きで、開場間もないコースをよくチョイスしていた。
豪華なクラブハウス。
池を巧みに配した綺麗なコース。
のちに「一度は訪れてみたい日本の絶景コース」BEST12に選出されることになる。

だが、しかし、この日は、生憎の雨。
雨模様ならぬ、本気の雨。
所謂、土砂降りというやつ。

カートが置かれてる場所は、大きなヒサシが伸びており、キャディさんがキャディバッグをカートに、忙しく積み込んでいる。

晴れていれば、この辺りから噴水のある池を見下ろす、なんとも美しい光景が見渡せる。

が、しかし、雨と靄で視界は悪く、美しい光景と出逢うことはなかった。

雨合羽を着込みいざ出陣。
とばかりに気合いを入れるが、バタバタバタという雨音の激しさに、入れたばかり気合いが、あっさり萎える。

「ほんまに行くんかいな?」と、誰に言うでもない独り言が口からでてくる。

「おはようございます。今日はよろしくお願いします」
元気な声でキャディさんが挨拶をくれる。

「firstputtさんが左打ちですね。グリーン周りは、PとSをお持ちしましょうか?」

元気な声だけでなく、笑顔でテキパキと客にひとりひとり丁寧に確認していく。

雨と靄のなかに、明るい陽射しを射し込ませ、沈鬱な空気を吹き飛ばさんとばかりに明るくしている。
(ここのキャディさんも凄いなぁ)と、感心ひとしおである。

キャディさんの陽射しに照らされて、いざ、スタート。
雨脚は去ることなく、終日降り注いだ。

グリーンに上がり、ボールを吹いたりラインを読んだり、預かったクラブを濡らさないように丁寧に扱うなど、キャディさんは忙しい。

ピンフラッグを持つなどして、少しばかりのお手伝いはするものの、焼け石に水である。

グリーンでキャディさんと並んで立った。キャディさんが傘のなかに入るように傘を少し傾ける。

「ありがとうございます。でも、結構です」と、笑顔で断られる。

どうやら、お客さんの傘に入るのは、ご法度となっているようだ。よく、訓練されている。

何ホールか消化し、ミドルホールのセカンド地点。前の組みはホールアウトしていない。

キャディさんに残り距離を訊きながら、またもや、傘を傾ける。

「グリーンの奥はどうなってます?」
「バンカーとかは?」
「ピンは手前?奥?」
「やっぱり、雨の日は高いところにカップを切ってるんですか?」
などなど−−−。

そうこうしているうちに、グリーンが空き、ナイスオンを目指すが、ままならず、雨の中をビシャビシャと足音を鳴らして駆け巡る筆者。

ティグランドで待たされるときも、キャディさんに傘を傾け、あれやこれやと質問攻め。

「右はOB?」
「バンカーまで、どれくらい?」
「今日みたいな雨の日は、キャンセルは多いのかな?」
「何組くらい入れてるのか?」
などなど−−−。

打つ順番となり、引っ掛けて右にOB。

と、思うようにはいかないゴルフ。

この辺りから、キャディさんの対応が変わってきた。

全員に知らせる情報は、同じなのたが、セカンド地点では、スッとクラブを差し出して

「これで、グリーン右を狙って下さい」

アプローチでは、落とし所を指差し、「ここね、ここ」と、眼光鋭いながらも、他の3人にはわからないように教えてくれるようになった。

雨は止むことはなかったが、キャディさんと一体になった、なんとも、これまでに経験したことない充実したラウンドとなった。

ラウンドが終わり、清算を済ませ、明細書に目をやると、キャディフィ欄に[荒天割り増し]の文字が。

安いものである。

他の3人はブウブウ言ってましたが(^^)