もののふの

          矢橋の船は速けれど

                    急がば回れ瀬田の長橋


急がば回れーーの語源だそうだ。

 

電車を乗り継ぎ、7インチのスタンドタイプのキャディバックを担いで牧野パークゴルフ場に向かう。

朝から雨模様である。

傘を差しながらの移動は、なかなか骨が折れる。

なによりも、車内での視線が痛い。

(え?この雨の中でゴルフ?よっぽど好きなのねぇ)

 

ゴルフをしない人からすると、雨中のゴルフは物好きにしか見えていない。

面と向かって言ってくれれば、いろいろと解説もできるのだが、なにぶんにも視線だけなので、どうしようもない。

 

牧野駅のホームに電車は滑り込んだ。

電車のドアが開き、ホームに降り立ったときには雨は上がっていたが吐く息は白い。


クラブハウスに着き、キャディバッグをフロントあたりに置く。

乾燥機には所狭しと雨合羽が並べられ、ガラスの扉は曇り、結露した雫が垂れている。早いスタートのプレイヤーは、冷たい雨に打たれ、さぞかし寒い思いをしたことだろう。


フロントでチェックインの手続きをしていると、顔馴染みのスタッフさんから、すまなさそうな面持ちで「すみません。落雷の影響で1時間遅れとなっております」と告げられる。

10:16が11:16となる遅いスタートとなったが、10時以降は雨は上がる天気予報となっていることから、スタートが遅くなるのは大歓迎である。「なんの、日没が心配だが、雨模様を考えると、遅れるほうがありがたい」と笑顔で応える。

このスタッフさんとも10年くらいの付き合いになる。密かに出世を楽しみにしているが、転勤されるのも困っちゃう。


さて、約2時間待ちとなった。

ロビーのソファに深々と腰を沈め、雑談に打ち興じる。今日は2組6名のミニコンペ。

最近のラウンドの様子、クラブを買い換えた噺、何処そこのゴルフ場はどうたらこうたらと女子会かのようなおしゃべりに花が咲く。アラ還世代もおしゃべりか?

ま、それはそれ、長く生きているので、互いにストレスのかからない術をそれなりに心得ている。


11:16スタートとなったので、売店に売ってたお土産用のお煎餅を密かに買い込みスタート室に向かう。


スッキリとした青空というわけにはいかないが雨は上がり、気温もやや上がってきた。ラウンドに支障はない。


4ヶ月ぶりのラウンド。

気温は低いので油断は禁物。大振りは厳禁、身体がまだゴルフ体になっていない。


手首でヒョイとクラブヘッドを引く癖があるので、腰を少しだけ先に切ってからヘッドをあげること一点に絞ってスウィングする。


3ホールを過ぎたあたりで12時となる。小腹が空くので、クラブハウスで求めたお煎餅を仲間と分け合いながらホールを消化する。ここまで2オーバー、まずまずの展開である。


7番ロングホール。

やや右ドッグレッグをアゲインストで迎える。

ティグランドの左端を使って、フェアウェイ左からセンターに向かってドローのイメージ。


小さい素振りを2回入れてアドレス。

左腰を切り、ヘッドを低く長く引いていく。

右肩を押し込みきったところから腰を切り返す。

手首が返り過ぎないように、ヘッドをややアウトから入れていき、インパクトを迎えるまで返らないように我慢。

インパクトの後は、フィニッシュまでクラブの行きたいように任す。


手応えはといえば、充分な掴まり感は得られなかったものの、フェアウェイセンターに向かって素直に飛び出した。


アゲインストに苛まれ、距離はいつもより出なかったがフェアウェイに転がった。


セカンド。

グリーン手前50ヤードに、フェアウェイを横切るように横長のバンカーが口を開けている。このバンカーに捕まったら一筋縄にはいかない。

普段なら4Uで100ヤード手前に刻むが、アゲインストであるとことと1Wも振るわなかったことからクリーク5Wをチョイスしてもバンカーまで届かないと踏んだ。

ライは、雨のため泥濘んでいる。

カジュアルの救済を受けようかと思い巡ったが(なぁに、これくらい)。


クリーンにボールだけを拾えたものの、距離が出ない。バンカーどころか、その手前の一本木すら届かない。


一本木は、フェアウェイの左側にそびえている。普段ならセカンドで一本木は優に超えてバンカー手前に着弾している。


ボールは、一本木の手前20ヤードあたり。グリーンは右で一本木が見事にスタイミーとなっている。


グリーンセンターまで160ヤード。

アゲインストを見込んで5鉄をチョイス。


一本木の高さは4mくらいなので、ロフト通りの高さが出れば一本木の頭上を越えていくと踏んだ。


みなさま、いかがでしょうか?

もう、結果はお見通しなのではないでしょうか?

心ある読者は、「アカン、アカン」と声をかけてくださっているのではないでしょうか?


結果は、みなさまの読み通り、ボールはクリーンに拾えず、一本木に激突。


ポトリと落ちたボールは、幹が邪魔でフルスイングすることができずに、無理くり打ったボールは、入れてはいけないバンカーに転がり落ちる。


急がば回れである。

1つ目は、カジュアルの救済を躊躇ったこと。ここから実は始まっている。

2つ目は、一本木を避ける攻め方を考えなかったこと。

3つ目は、幹が邪魔でフルスイングできないにも関わらず、グリーン方向を狙ったこと。


どこかで、[急がば回れ]ができていればラウンドリズムを壊すことはなかった。



結果は46/46。

ほろ苦いラウンド開幕となった。


さてさて、ゴルフ体とゴルフ脳をそろそろ作りなおすことにしますか。