タンタンタン。
ゴルフ練習場の階段を登っていく。
階段は狭く、キャディバックを担いだままで人が交差することはできない。
ときおり、キャディバックが階段の手すりにぶつかる。
いつもの打席は2階席。
1階に比べて比較的すいている。
練習場は東から西に向かって打っていくように作られており、夕方の時間帯は西日が眩しく、打球の落ちどころはとてもみにくい。
練習場の奥ののり面に直接届くと240ヤード、さらに奥の林に飛び込めば250ヤード超えとなる。
160ヤード、140ヤード、100ヤード、50ヤード地点にグリーンが作られている。
人工芝のグリーンであるため、乗せようと思うと、高弾道で上からドンで止めるか、スピンを効かせてキュキュッと止めないと奥に転げ落ちる。
今日も日が傾きはじめており、そろそろ西日が襲い掛かってきている。
先に練習している人も、そろそろ終わりに向かっており、帰り支度をはじめる時間帯である。
階段を上がり、2打席分のスペースが空いている場所を見つける。
2打席のうち、打ち出す方向に向かって、右側の打席にキャディバックを置く。
通路に設置されているボール貸出機から100球ばかりを籠に落として、打席に戻る。
ゴルフ練習場は、右利きに対応するように作られているため、ボール供給機も右利き用しか用意されていない。
この機械はよくできており、ボールを供給機にセットすると、レバーをクラブヘッドで抑えると自動的にボールが転がり落ちきて、マットやゴムティにセットされるという優れもの。機械仕掛けなので電源もいらない。
しかし、左利き用はあまり目にしない。圧倒的な需要の差であるため、当然といえば当然である。自然であるといってもよい。
左利きのゴルファー。所謂レフティは、ボール供給機が使えない。
マットとボールトレイが通路に置かれているので、これを自分の打席にセットする。
ボールトレイにボールを籠から転がし入れ、クラブのヘッド部でトレイのボールを転がしてマットに運ぶ。
これで、ようやく打ち始めることができる。
慣れれば造作ないことで、右利きゴルファーと大して変わらない。
西日が襲い掛かる前に大きなクラブの練習を行い、西日で見ずらくなってくる頃にはアプローチ練習に切り替える。
大きなクラブからアプローチに切り替えるタイミングで、打席に設えたベンチに腰掛け煙草を吸いながら一服する。(昔は愛煙家であった)
これもルーティンといえばルーティンである。
缶コーヒーを飲みながら、煙を楽しみ、アプローチの注意事項に思いを巡らす。
ランニング、ピッチショット、ピッチエンドラン、バンカーをイメージしたロブなど・・・。
(おいおい、打席はたくさん空いてるのに・・・)
新しいお客さんがキャディバッグを担いで打席を選んでいる。
往々にして、打席選びは、練習場に作られたグリーンと正対する位置を好んで選ばれているようだ。
打席選びのときの視線の先は、打球方向に向かっており、打席の前後にどんな人が打っているかを気にする人は全くいない。
新しい客人は、キャディバックを向かいの打席に置いて、さっさとボール貸出機に向かいボールを手に入れている。
このままだと、レフティゴルファーと向かい合わせて打つ羽目になることに気がついていない。
仕方がないので、休憩もそこそこに煙草をもみ消し、打席に立ち、素振りをはじめる。
ボール籠を下げた客人に、<向かいで打つのは左利きですよ、向かい合わせで打つことになりますよ、大丈夫ですか、気が散りませんか>をアピールする所作が必要になる。
レフティゴルファーは、向かい合わせで打つことは、いつものことなので、慣れてしまっている。ウェルカムである。
がしかし、右利きゴルファーはその経験値は乏しく<向かい合わせ>に戸惑われることが一般的である。
もちろん、気になさらないゴルファーもいらっしゃいますが、そういう人は、やはり上級者であるとか、ベテランであるとか、ゴルフに対する造詣が深い方である。こういう方は、いでたち、立ち居振る舞い、道具でわかるので<向かい合わせ>をアピールすることはない。
西日に悩まされる時間帯の2階打席。
初心者、初級者がやってくる頃である。
ガラガラガラ・・・・。
(あっ、入れちゃった。大丈夫かな)
向かい打席の客人は、籠のボールをボール供給機に勢いよく入れた。
ボールは入りきらずにピラミッドのようにうず高く積まれている。
ボール供給機に入れてしまうと容易に打席を代えることはできない。
ゴルフシューズに履き替え、左手にグローブを装着し、キャディバックからクラブを取り出し、素振りがはじまった。
「ちぇっ」
ようやく、自身の置かれている状況が把握できたようである。
しかも、そのリアクションが「ちぇっ」という舌打ちである。
(やれやれ、ようやく気がついたか。しかも舌打ち)
舌打ちをしたということは、この<向かい合わせ>を歓迎していないことをあからさまに表している。
(大丈夫だよ、こっちでリズムやタイミングはうまく外してあげるから)
<向かい合わせ>となって、一番やりにくいのは、スイングリズムが同期するときである。
解りやすくいうと、「チャー・シュー・メ~ン」が同じタイミングとなったときである。
自分のリズムなのか、他人のリズムなのかが分からなくってしまい、打っているのか打たされているのか、なんとも居心地が悪いスイングとなってしまうことにある。
しかし、アドレスから「チャー」に移行するまでのタイミングが分かれば、同期を外すことができる。
(早よ、打ちーな)
がしかし、3発打っただけでやめてしまい、休憩に入った。
<向かい合わせ>が嫌われるには、もう一つの理由がある。
なんとなく、スウィングを観察されているような気になってしまい、集中できなくなるようだ。所謂、自意識過剰が原因となっている場合である。
実際は誰も見ていないのであるが、まだ、発展途上で自分のスウィングに自信がもてない初級者はこの理由が多いように感じる。
この場合は対処法はない。
<向かい合わせ>を解消するしかないのであるが、供給機にボールをセットしたことから、今さら打席を代えることはできなくなっている。
どちらかが終わるのをひたすら待つしかない。
(スマホをいじりだした。私が終わるまで待つんやね。ちゃっちゃと終わらせるから待っててね)
てか、なんで私が気を遣わなあかんねん。
レフティゴルファーの独り言でした。