暗闇の階段を懐中電灯の頼りない明かりだけで降りる。
非常灯も点いていたのだろうが、停電してから4時間も経っているため、バッテリーも尽きてしまったのだろう。
2018/09/06 03:08 北海道胆振東部地震
同日 03:25 ブラックアウト(全系崩壊)
電力会社の全ての発電機が停止するという日本ではじめての出来事。
映画や小説の話ではない。
筆者は当日、遅いバカンスとばかりに、ホテルマイステイズプレミア札幌パークの18階に投宿していた。25階建てのタワーホテルである。
前日に北海道入りして新千歳空港カントリークラブでラウンドの予定であったが、台風21号の爪痕深く、フェアウェイにはなぎ倒された高木で塞がれクローズとなっていた。
翌日、つまり9月6日は、楽しみにしていたニドムクラシック。ここは45ホールあるため、被害を受けていないホールを繋いで営業しているとのこと。
なんともたくましい。
0308から一変する。
夜が明けてから、ニドムと連絡をとった。
送迎車は、ニドムを出発しているという。ただし、高速道が閉鎖しているので到着が遅くなる。が、向かっているので待ってて欲しいとの知らせ。
ホテルの玄関には、別のゴルフ場、「北海道クラシック」の送迎車がキャディバッグを積み込んでいる姿がみられている。
意外と平常な感じである。
しかし、ホテルのロビーはチェックアウトした宿泊客でごった返している。
そう、交通機関が麻痺し、行き場を失ったインバウンド、訪日外国人旅行者達である。本来なら新千歳空港に向かっていたのだろう。
言葉がわからないのでどんな会話をしているのかよく判らないが、一様に不安げな眼差しは共通のものであった。
ロビー奥のカフェでおにぎりやパン、茹で卵、水が振る舞わられ、頂きながら送迎車を待つ。
炊き出しの食事について、ホテルスタッフに怒鳴る外国人。
スタッフは不安感がそうさせていることを知っており、うまく流していた。
炊き出しの文化がないのか、スタッフは、ご苦労様である。
そうこうしていると、フロントから呼び出しがあった。ニドムからの電話である。
クラブハウスが停電したことで、充分なサービスと安全が保たれていないことから、急遽、クローズが決まったとのことであった。
無理もない。
札幌より震源地に近いところに位置している。
さて、どうする。
18階まで階段で上がることは、選択肢から真っ先に消えた。考えたくもない。
スマホで色々調べると、最寄り駅にレンタサイクルがあるらしい。行ってみたが、見当たらない。自転車置き場のおじさんに尋ねてたが、「知らない」と連れない返事。
札幌駅にもある。
することもないので、歩いてみることにした。
信号機がすべて消えている。
車は走っているが、注意しながら走っているのだろう、速度は遅いめに感じられた。
歩道脇には、コンビニや銀行などの商店が軒を連ねているが、当然なのだが、どこもかしこも照明は点いていない。
電源がないので、シャッターは殆ど降りたままとなっている。
シャッターには臨時休業の貼り紙が貼られている。
「都会の喧噪」がない都会。
車のエンジン音やクラクション。
路面電車のカーブを曲がるときのキシリ音。
人の話声。
電気が無くなると、静けさだけが残る。
聞こえてくるのは、交通整理のおまわりさんの笛の音。
夜明けの都会が一日中続いているようだ。
「全品100円だよー。生鮮食料品や冷凍製品は売らないよー。さぁ、買った買った」
冷蔵庫や冷凍庫の電源が未明になくなっているので、品質の保障ができないことから販売できないとのことである。
イオン系のコンビニ[まいばすけっと]。
商品はあるが、レジに電源がないため精算できない。
思い切ったものである。
なんとなく見えてこない生活に対する不安を抱えている。
すぐに手に入らないかもしれない商品を手に入れておきたい。
誰もが思うこと。
「まいばすけっと」さんは、安心と心意気を100円均一とともに届けていた。
客側も整然と列を作り、高価なものは手に取ることなく、当座の必要なものを買い求めていた。
筆者もビスケットや飲料品を買い求め、先を急ぐ。
ススキノ、大通り公園、テレビ塔を経て札幌駅を目指す。
札幌駅駐輪場にある、レンタルサイクル屋さんを見つけた。
対応してくれたおじさんは、年の頃なら65、6の現役を退き、小遣い銭稼ぎでやっているご様子。
0308に地震が発生して、0500には、店を開けた。
交通機関が麻痺しているので、自転車が必要になる。と、みて開業前にクルマを走らせたそうだ。
案の定、沢山の人が詰めかけたそうである。
読みが当たり、沢山の人のお役に立てて、ご満悦な様子。
「本日中に返せなきゃ、明日でも、明後日でもいいよ。」と、笑顔で自転車を用意してくれた。
北海道大学までの道を教えてもらい、レンタルサイクル屋さんを後にする。
北大では、クラーク博士の胸像や農学部校舎、第二農場、ポプラ並木、銀杏並木、クラーク記念館など見て回る。
購買部を見つけたので覗いてみた。
ここでも、「まいばすけっと」さん同様に、100円均一で販売。
「はい、ただいま、ガリガリ君が半分溶けたので、30円となりました。」
アイスクリームは、溶け具合で値段が決まるシステムを急遽、編み出していた。
時価ならぬ溶価といったところか。
若者は、窮地をも楽しむ、逞しさである。
北大キャンパスを一巡りし、ホテルへの帰途に就く。
途中で札幌駅前のパチンコ屋さんが、どこから手に入れてきたのか、パンの無料配布を行っていた。
行政に頼らずに、民間ベースでの助け合いには、頭が下がる。
パチンコひまわりさん、天晴れでした。
翌日から、少しずつ停電が解消されていき、街の機能も少しずつ回復していくことになる。
あれから、一ヶ月が経ちました。
いまだに生活が戻っていない方もいらっしゃる。
不幸にもお亡くなりになられた方は、さぞやご無念だったかと存じます。
ご冥福をお祈りします。
追伸
レンタサイクルのおじさん。
チャリンコ、ありがとうございました。
お別れのときに
「また、元気な北海道のときにおいでください。」と、声をかけられた。
はい、寄せてもらいますよ。
だって、ゴルフしてないもん。









