「では、パターとボールを持ってロビーに集合。」

幹事さんの呼びかけである。

前日に三重県津市にある温泉宿「白山荘」に投宿。マイカー乗り合わせで宿泊先に現地集合となった。
温泉宿であるが、ゴルフ場と提携し、ゴルフコンペプランを企画している。

温泉に入り、宴会がはじまる。
ビールや日本酒などアルコールが進む。
宴会につきもののコンパニオンはいないが、ゴルフ談義、仕事談義で盛り上がる。

会社の慰安旅行とさほど変わらない。

宴会が終わり、一旦、部屋に解散となる。
いつもの慰安旅行であれば、ここで二次会に繰り出す運びとなる。

しかし、幹事が発した言葉が冒頭の台詞。

二次会に繰り出すのではなく、パターの練習を始めるというのである。

なんと、勤勉な。
いや、明日のコンペが楽しくて、待ち遠しくて仕方がないといった面持ちである。

いい歳をした、おじさま達であるのだが。

「これをやっとくと、明日は2打は縮まる。」
と、熱心にパットの大切さを解く大先輩。


142ほど叩く筆者にとっては、明らかに誤差の範囲である。

ま、先輩方とのコミュニケーションと割り切って付き合うこととした。
することもないので。

幹事部屋で飲み直しの大号令がかかることもなく、就寝となった。

やはり、慰安旅行ではなかった。


(当時の写真はないのでホームページから)


一夜が明け、外は、やや湿ったひんやりとした空気。
まだ、朝靄が立ちこもり、フェアウェイの緑が白味がかって見えている。
とても美しい光景である。ゴルフをはじめなければ出会うことのない風景である。
しかし、その美しさは経験の浅い筆者にも途方もない難敵に感じられた。

スタート前にレンジで打った。

筆者の球筋の変化を目ざとく見つけたのは、"手首を使うな"と教えてくれた先輩であった。

思いっきり手首を返していたので、指摘されるかとドキドキしたが、手首を返していることには気がつかなかった様子であった。

それよりも残酷なお知らせを持ってきていた。もちろん、親切からである。

「えらいこっちゃ。このゴルフ場、プレフォーないそうや。全部打ち直しやそうや。大丈夫か?」

「え?え〜。」
〈大丈夫なわけない。〉

あの筆者お気に入りの"商いの極意"ルールがない。
本人、同伴競技者、ゴルフ場の三方ともがストレスに苛まれること必定。

世界平和の秩序が崩壊するに等しいショックを朝一番で受けた。


メトロポリタンゴルフ倶楽部
全長7705ヤード、P72、コースレート77・1は国内2位。

開業間もない、アメリカンスタイルのパブリックコース。なにがアメリカンなのか筆者はよくわからなかったが、どうやら、キャディのつかない乗用カートでのプレイを指しているようだ。

バブリーな頃に建設された。
どこをとっても瀟洒なつくりとなっている。

クラブハウスには、スタート時間と名前が表示されるモニタが設置されている。
筆者の名前も緑色で表示されていた。

スタートした組は名前がラベンダー色に染まる仕組みとなり、スタートの進み具合が一目瞭然となっている。

本日、ご一緒するのは、同じ職場のA氏。現場叩き上げのナイスガイで、お若い頃は実業団野球でならしたアスリート。


次はB氏。
球筋は極度のスライサーなれど、巧みに打ち出し方向を見極めスライスさせてフェアウェイに戻してくる。バナナボールの異名を持っておられる。
気になるのは、他の先輩方はあまり一緒に周りたがらない空気が感じられた。なにやらルールとマナーにうるさいそうだ。

最後にC氏。
筆者をゴルフにいざなった張本人。本町駅のつるやゴルフに連れていってくれた先輩。

B氏とは初対面である。A氏から挨拶しとけと指示され、丁寧に挨拶を行う。

「よろしく、えー天気になりそうやね。」
にこやかにされていた。

ゴルフと良いお天気。
それだけで、ここにいる人はみんなニコニコしている。

困惑顔をしているのは筆者だけのようである。

さて、スタートホール。

(すんません。またまた、つづくです。)