「ウリァ!」(え?なに?)
「トリァ!」
(え?かるー。なにこの感覚。)
コースデビューを終えて、ビールが美味しかっただけで、ゴルフのほうはというと、ちっとも楽しくない。ストレスだけ体得したような、なんとも整理がつかない。
次のノルマは、【泊まりでコンペ】。
そうノルマという感覚となってしまった。
具体に応募が始まり、参加メンバーも明らかになってくる。
若手のコンペという謳いこみであったが、一泊温泉付きということもあり、ベテラン勢の出場が多くなっている。若手のほうが少ない構成となりつつあると知らされた。
入社間もない筆者は、まだ、ベテラン勢の顔も名前も知らない状態。
恐る恐る、誰と廻るのか聞いてみた。
「ゴルフの組み合わせは、4人のハンデの合計が均等になるように組み合わせるよ」
てことは、初心者には、上級者が充てられる。
〈まずいなぁ。迷惑かけまくりやし、緊張しまくりやし、知らん人やし、恐らく偉いさんやろし〉
いくら練習しても急激に上達するスポーツではないことがわかってきた。
運動神経や反射神経でなんとかなるものではなく、1日数mmの成長の積み重ねがものをいう競技であることがわかってきた。
となると、残りひと月くらいでなんとかなるものでは絶対ないことが明白である。
万事休す。である。
積み重ねの競技。
見よう見まね、付け刃、一夜漬けはまったく歯が立たない競技。
であるならば、基礎である、基礎しかない。
基礎をコツコツするしか対処法がないのである。
ひと月後になんとかしようと考えていること自体が無謀であることに気がづいた。
となれば、じっくりやるしかない。
意を決し、レッスンプロの門を叩いた。
筆者のスィングを一目みて、
「腰や足が動き過ぎ。下半身がフラフラしている。」
まずもって教えられたのは、下半身の動きを止めること。
アドレスした姿勢で下半身を固定。
いわゆる、べた足である。
トップからダウン、フォローに至るまで、身体は正面を向いたまま、動かすな。
次に身体を正面に向けたまま、振りかぶる。シャフトが地面と平行になるまで。
そして、ここからダウンスィングに入るが、びっくらこいたのが、ダウンと同時に手首を返しはじめよ。との教えだった。
「え?手首使っていいの?」
「クラブヘッドはシャフトの先にある。この辺りから返していかないとインパクトにヘッドは間に合わない」
フォローは、トップと反対にシャフトが地面と平行になるところに収めよ。
この打ち方で何球も打たされた。
頑張って手首を返すのだ、こう早く手首を返すとインパクト時のフェース面は相当被って入っている感覚なのだが、
「遅い」
「もっと早く返していけ」
と、どんどん手首を返すタイミングを早くさせられていく。
何度やっても、遅いと指摘される。
ヤケのヤンパチ日焼けのなすび、どうとでもなれ!とばかりに手首を返す。ちょうど、卓球でスマッシュを打つかのような被せかた。
〈えーい、ままよ!〉
冒頭の変な台詞。
「ウリァ!」(え?なに?)
「トリァ!」
(え?かるー。なにこの感覚。)
これまで感じたことのない「ウリァ!トリャ!」がグリップを通じて伝わってきた。
「それでスクエアに当たっている。しばらく、それで打つこと。」
なんだろう。この感覚、「ボールを掴まえる」という表現を聞いたことがあるが、こういうことかと理解できた次第。
これまで先達に教わり、手の皮がズル剥けになるまで打ち込んだが、シャンクからプッシュスライスの球筋が精一杯だった。
が、いきなりドローになった。
この掴まえ感が気持ちいい。ハマった瞬間である。
(すんません。また、つづきです。)