読書感想【ギリシャ人の物語】 | so what(だから何なんだ)

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・・・・・・・っということで、塩野七生女史のギリシャ人の物語シリーズ第3巻。
ギリシャ人の物語なのでペロポネソス戦争でデロス同盟が崩壊したところで終わりかと勝手に思っていたけれど、マケドニアもギリシャ語圏でしたね。

遠征にギリシャ人も連れて行きましたから当然物語に入るのですが、アレクサンドロスまで書いてくれるとは嬉しい誤算。

もちろんアレクサンドロスについては興味があって、別に本も読んだし、コリン・ファレル演ずる映画も観ました。
塩野女史の「・・・物語」シリーズは歴史書として認めない専門家が多いようですが、彼女は「歴史エッセイ」と認識しているようですね。

あくまでも物語なんだと。

歴史の専門家に負けないくらい造詣が深いのですが、読み物として実に面白い。

この450ページあまりの本も一気に読んでしまいました。

彼女の書く歴史は特徴があってあくまでも人間に焦点を絞って書かれていることです。(だから「・・・物語」なのですが。)

彼女は哲学出身なので、ソクラテスに強い思い入れがあるはずなのですが、哲学にはあまり触れず、あくまでソクラテスという人間性に絞って書いている。

なのに、アレクサンドロスについて必ず触れられる「ゲイ」と「マザコン」については一言も書いていない。

(ちなみに、映画はゲイの部分を強調したから後味の悪いものとなってしまった。)

彼の人間性を描くのに邪魔になると判断しているからでしょう。

これに限らず取捨選択が実に小気味良く、それが彼女の書く歴史の人気の理由となっています。

他の特徴として、戦闘を描くのが実に上手い。

アレクサンドロスの生涯は戦闘に次ぐ戦闘に終始したけれど、一つ一つを丁寧に描いている。(コリン・ファレルは赤色羽飾りを付けていたけれど、実際は白色だったのですね。)

戦闘ほど人間性が強く現れるものはないからでしょう。

塩野女史もついに今年で81歳?

本作をもって「歴史エッセイ」から卒業するらしいけれど、まだまだ書き続けて欲しいとファンなら誰でも願うでしょう。(^^)/