紫煙を吐き出す唇に
宙を描く その細い指に
僕の目は 奪われた
禁煙所での15分。それは脳の解放をもたらす。
90分の講義は45分授業を寝て過した僕には長すぎて、退屈だった。
大學に進学すれば、好きなテーマで好きな内容を学習できる。
ずっと好きだった年上の彼女(あのひと)は、そう微笑んで僕に勉強へと向かわせたけど、
大學1年目にはそんな面白さはみつけられなそうだった。
全額共通科目という名目を持った講座は、僕にしてみれば中途半端で――…
「そこから学門を深めるってのが狙いだろ?」
バカだな。という視線を含め、煙を吐き出した吉沢。
それほど仲が言い訳ではないのだけれども、喫煙所でよく会うことから、喫煙仲間になっていた。
「気がついたら友達」 曖昧な定義で関係を形成していく。
それが出来るのも、今のうちかもしれない。
僕は、未成年の癖に吸いなれた煙を笑みとともに吐き出した。
ジメジメとした空気が、首元にまとわりついて離れない。
もう9月後半だというのに、秋の到来はまだなのだろうか。
湿気を帯びた風が頬を撫でるが、爽快感などは一切なくて、僕は顔をしかめた。
金曜日の夕暮れ。
湿度を帯びた空気に、やり場のない何かを感じた僕は、
とりあえず仲間のところへと 足を向けた。
「かんぱーい!」
今日日の大学生ほどめでたい人間はいないのだと思う。
金曜日の夕方から、居酒屋に足を運び、浴びるようにアルコールを飲む。
堕落した若者。 楽観的な若者。だから今時のヤロウは・・・
なんて僕等を見る社会人はそんな目を向けるかもしれない。
社会はそんなに甘くないぞ、といわんばかりの冷たい瞳。
だけど、この怠惰な時間を僕は「猶予期間」だと思う。
イヤでもあと3年もすれば僕は社会人。
それほど得意な能力も、弁護士や学者になるような
努力もする気はない。それなりに生活ができて、楽しめればいいんだ。
きっと、そんな僕に与えられる人生は楽なものではないだろう。
現に父や兄を見ていればそう思う。
身を粉にして働いても、結局はただの「サラリーマン」で人生を終えてしまうんだ。
だからこそ、今を。
今をそれなりに パラダイスのように生きていたかった。
「ごめっ・・・ちょっと外で風浴びる・・・」
足元がフラフラで。
目がグラングランする。
気温が暑かったせいか、疲れていたせいか、解らないけど、
飲みすぎたことだけは確かだった。
店の外に出て、入り口に座った。
「営業妨害」と思われるほど店hの規模は大きくない。
今日は僕のいるサークルでいっぱいの店は、ほぼ貸しきり状態だろう。
安心して、腰を下ろして空を眺めた。
曇り空の仲に、おぼろげな月が輝く。
少し冷えた風が心地よかった。
瞳を閉じて、一本の煙草に口付けをすれば
携帯のバイブが為った。
梓、大学に入って直ぐにできた彼女からだ。
明日のデートの約束だろうか。
それとも、飲みに行っていることへのお小言だろうか。
彼女は可愛い。
でも 、 今はみたくなくて、携帯をひんやりと冷えたコンクリの上に置いた。
ただ、今は何も考えず 酒に溺れて痛かった。
「あれー、君。大丈夫?」
素っ頓狂な声と、目が覚めるような真っ赤なラケットバッグ。
開いた目の先には、見慣れない女の人が立っていた。
「あー、コイツ、うちのサークルの1年。」
「へぇ、1年入ったんだー。アタシこの前留学から帰ってきたの。××よ、よろしくね。」
彼女がかがんだ瞬間、ふわりと甘い香りがした
どこか、懐かしいような甘い香りが。
暗闇でおぼろげにしか見えない顔。
はあ、よろしくおねがいします。
と曖昧な返事をした僕に。
僕の唇から、煙草を奪い
「未成年。まだ早いよ。」
それに口付けをし、煙を吐き出した。
言葉とは裏腹に、笑みを浮かべて。
「Air」1話。
恋物語と詩を載せていけたらと。
時々全然違うテーマも載せるよていです。
ギャグにしようかと思ったのですが、とりあえずはこの方向性で。