戦争はしちゃいけない

良くある機甲少女のバトルアクションものかな、と思ったら全くそんなことはなく。確かに女の子が兵器になっているが、バトルシーンなどはほぼ描かれず。ただ一兵士が撃ち合ったり無辜の市民が爆弾で吹き飛ばされるような、血なまぐさい戦争の現実は描かれる。日々色んなメディアでウクライナの惨状を見せつけられる昨今、えらいタイミングでこの作品を紐解いてしまった。今やロシアの蛮行がいつか北海道にも及ぶのでは、とさえ囁かれているが、この作品はまさにその北海道が舞台で、どうやら日本はどこかの国と戦争状態にあり、本土はほぼ焦土と化しているようだ。作品冒頭には「札幌空襲」が起きて、数万人の人々が亡くなる。ぶっこわれた街並みと日常は、散々テレビで見たあの光景に、そっくりだ。

 

物語は、そんな戦争に怯える日々、可愛い自分の彼女がある日突然、国の軍隊によって魔改造されてむちゃくちゃ強い兵器にさせられてしまう。シュールを超えて滑稽、と最初は思ったが、思いのほかシリアスで残酷な物語だ。圧倒的な力で敵を殲滅する彼女がいるから、自分と自分の街は守られている。いや日本が守られている。でも自分の彼女は、人を殺し、街を破壊する。彼女とデートすれば、その代償として多くの兵士が殺される。そして体を兵器に改造された17歳の女の子は、徐々に心も、壊れていく。

 

色んな作品で色んな恋模様を見てきたけれど、これほど切なく悲しい恋は無かった。良く登場人物の心の揺らぎ、絶望と勇気が描かれていたと思う。こまけぇ事は置いといて、ちせとしゅうじのほのぼのとした日常が壊される様、壊された人生、そして壊れていく人間の姿を見て、何せ戦争はいけない、と改めて心に誓えば良い。そんな作品でした。