シャルロット
「こんな所に2人が居るってほんとかしら?」
2人はダーネヴィールの案内で、とある廃墟に潜り込んでいた。
正真正銘、ドワーフの見捨てられた廃墟だ。
ドワーフ一族が世界から姿を消した後も、そのテクノロジーは未だ稼動し続けている。
メアリー
「あのドラゴンの爺さんが言ってんだから間違いないと思うぜ。多分、嘘は言ってねえよ。」
メアリーはどこと無く確信を得た様子で答える。
こう言った時の彼女の直感は妙に当たる事を、シャルロットは熟知していた。
シャルロット
「なら居るわね・・・きっと。」
しばらく無言で歩いていると、2人の足元にドワーフスパイダーが転がっているのが目に入った。
かつてドワーフが作成した、蜘蛛のような形をした多目的オートマトンの一つだ。
彼らは主無き廃墟を今も徘徊し、侵入者を見つけ次第排除しているのである。
シャルロット
「見てメアリー。まだ少しオイルが漏れ出してるわ。」
メアリー
「ホントだな!・・・で、えーと・・・なに??」
シャルロット
「もう、おばかさん。オイルを血に置き換えて考えてみなさいよ」
メアリー
「あ、なるほど!つまり、死んだのはつい最近ってことか!」
シャルロット
「そういう事。誰かが最近ここを通ったのは間違いないわ。」
メアリー
「椿たちって事だな!」
シャル
「確信は無いわ。もしかしたら他の人間って事もあり得る話だし。」
メアリー
「山賊とか・・・??」
シャル
「ええ・・・考えたくないけどね。」
シャル
「でも・・・すごいわね、ドワーフの技術は。」
メアリー
「何が何なのかさっぱりだけどよ!こうやって何千年経った今でも動いてるって感動だよな!」
シャル
「そのおかげで罠には注意が必要だけど・・・」
シャル
「しかし暑いわね・・・。」
メアリー
「ほんとによぉ・・・この蒸気みたいなの、暖房なのかね??」
2人が感じた暑さは、この遺跡全体に無数に配置されているパイプからの温度だった。
ドワーフテクノロジーを支えるこのパイプは、彼らの暖房代わりも役を担っていたのだろう。
極寒の屋外とは打って変わって、厚着をしたノルドとハイエルフには耐え難い気温だった。
メアリー
「椿には最高の環境だなww」
シャル
「ほんとねwwこれでも寒いって言うかもよ?w」
メアリー
「・・・早く会いてえな・・・。」
シャル
「・・・きっともうすぐ会えるわ。」
2人はここに来て、自分達が椿にどれだけ会いたいのかを実感する。
何年も何年もそばに居た姉妹のような存在。
彼女達は後一歩のところまで迫っているのだ。
シャル
(椿・・・無事で居てね・・・。)
シャルはメアリーに不安を悟られないように心の中でそうつぶやいた。
メアリー
「か・・・かてえよ・・・手がジンジンするう・・・・」
一匹のオートマトンを倒し終えたメアリーがそう嘆く。
彼女は力任せに思いっきりドワーフスパイダーを叩いていた。
シャル
「こう言うのは間接の部分を狙えば良いのよ、メアリー?」
シャルが呆れたような口調でメアリーに語りかけた。
オートマトンと戦うのはこれが初めてだが、原理としては重装鎧を着た兵士と同じである。
メアリー
「ん~にゃ、あたしに斬れない物は無い!!」
シャル
「既にその記録がストップしちゃってるんだけど?」
メアリー
「今のもバラしたからセーフ!」
シャル
「あ、そう・・・。」
シャル
「ちょっと待って・・・何かしらこの匂い・・・。」
メアリー
「くせえよな・・・なんか、獣みたいな匂い・・・」オエッ
奥に進むにつれ辺りに充満していく匂いに、2人は顔をしかめた。
それは何やら家畜の小屋のような、しばらく風呂に入れてもらっていない犬のような匂いである。
シャル
「この奥からだわ・・・。」
メアリー
「うわ!くせえくせえ!!」
シャル
「ちょっと静かにして?」
メアリー
「ご、ごめん・・・」
シャル
「こいつらだわ・・・」
メアリー
「な・・・なんだよぉこれ!!ガリガリのトロール!?」フガフガ
シャル
「これがファルメルよ。スノーエルフとも言うけど、それは昔の話ね。」
メアリー
「し・・・死んでんのかな??」
シャル
「片方は喉元から頭蓋にかけて貫かれた痕があるわ・・・もう片方は強力な魔法で内側から凍らされてるわね。」
メアリー
「おいおい、それって絶対あの2人じゃんかよ!!」
シャル
「ええ、これで確信が持てたわ。急ぐわよ!」
メアリー
「アイ・サー!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
シャル
「みて、こっちにも・・・」
メアリー
「この氷の魔法・・・セラーナが使ってたのと同じやつだな」
シャル
「しかも溶けてないわ。たいまつも点いてる。」
メアリー
「急ごうぜ!」
メアリー
「おお!?なんだよあのでっかいのは!!」
シャル
「わからないけど・・・ドワーフ製の何かね・・・」
シャル
「あの2人がやったのかしら・・・まだ少し温かいわね・・・。」
メアリー
「こ、こんなの剣が通る自信ねえな・・・」
メアリー
「わーお!!すげえ~!!」
シャル
「すごいわねえ・・・スカイリムの地下にこんな場所があるなんて!!」
シャル
「夜空みたい・・・ドゥーマーはここで、何を考えていたのかしらね」
メアリー
「地上にいるみたいな感覚になってきちゃったよ・・・」
シャル
「そうね・・・ほんとに綺麗・・・」
2人は少しの間この風景を堪能していたが、気を引き締めてさらに歩みを進める。
道端には転々と死体が転がっており、椿達への道しるべとなっていた。
メアリー
「あの2人相当暴れたみたいだなw」
シャル
「そうね。でも襲い掛かってくるなら仕方ないわ。」
「アハハ!」
「・・・すわよね!」
メアリー
「ん・・・?シャル、今・・・」
シャル
「ええ、今もはっきり聞こえてるわ。」
メアリー
「あの2人か!?」
シャル
「間違いないわ・・・走るわよ!!」
メアリー
「どっちだ!?くそっあたしもエルフ耳がほしい!!」
シャル
「こっちで間違いないわ!ほら急いで!」
シャル
「いたわ!!」
2人
「椿!!」
椿
「え・・・・!?」
椿
「シャル・・・メアリー・・・!?」
メアリー
「やったぜ!!会いたかったぞ~このやろ~!!!」
メアリーはそういうなり椿を思いっきり抱きしめた。
当の椿はと言うと、ポカンとしたような顔でメアリーをさすっている。
その顔には一切の罪悪感など見て取れず、むしろなんて大げさなのか、と言った表情だった。
椿
「もう、メアリーったら大げさなんだから・・・」
メアリー
「大げさもクソもあるか!!心配かけさせやがって!!」
椿
「??心配と言えば、シャル!無理させたらダメじゃない!傷はどんな感じなの?」
シャル
「もうすっかり良くなってるわ。あれからかなりの時間が経ったしね」
椿
「またそんな事言って!一週間やそこらで治るわけないじゃない!」
メアリー
「・・・ちょっと待った、一週間・・・??」
椿
「え??」
シャル
「椿、今の本気で言ってるの?」
椿
「なに??どうしたの2人とも・・・」
シャル
「あなたとセラーナが旅立ってからもう一ヶ月以上が経過してるわ。」
椿
「へ??うそでしょ??」
メアリー
「本当だよ、スカイリムでは椿が死んだって噂になってるんだぞ・・・」
椿
「セラーナ??」
セラーナ
「おかしいですわね・・・そんなハズは・・・」
椿
「私達がドーンガードから出発してセラーナの家までだいたい一日・・・滞在したのもせいぜい1~2時間・・・その足でウィンターホールドへ向かったから・・・」
セラーナ
「デキソンを探しに行った期間を含めても、やっぱり一週間ほどですわよ」
シャル
「この空白の一ヶ月・・・気味が悪いわね・・・。」
椿
「うん・・・自覚がない・・・」
シャル
「セラーナの家が怪しいわね」
椿
「ソウル・ケルンに居た事と関係があると思う??」
セラーナ
「恐らくは・・・ですが、時の流れが歪んでるなんて聞いておりませんわよ?」
メアリー
「どっちにしろ、あたしは2人が無事でよかったぜ!!」
シャル
「・・・ところで、その服と、大切な刀はどうしたの?」
椿
「服は汚れたからソリチュードで買ったの。刀は・・・ああ~・・・折られちゃった・・・」
メアリー
「折られた!?」
椿
「そう・・ダーネヴィールって言うドラゴンにね・・」
シャル
「地上で会ったわ。私達をここに連れてきてくれたのも彼よ。」
椿
「まだ居てくれたの!?好きなところに行っていいよって言っといたのに・・・」
メアリー
「古強者って感じだったな!椿のことをかなり気に入ってたみたいだぜ!」
セラーナ
「ふふふw完全に懐かれてしまいましたわね、椿。」
椿
「ふう・・・でも、こんなところで2人に会えてとっても嬉しいな」
セラーナ
「ですわね!自警団復活・・・!ってところかしら?」
メアリー
「そうだな!もちろんセラーナも新団員だぞ~!」
シャル
「あら、とっくに加入してるつもりだったわ」
椿
「さて、積もる話は後!さっさと星霜の書を手に入れて帰ろう!!」
シャル
「賛成、ここの匂いはどうしても無理だわ・・・」
メアリー
「うっし、あたしらが揃えばちょちょいのちょいだ!」
セラーナ
「さあ、行きましょう!」
つづく






















































